INSPIRATIONS
2023.03.20 MON
ECO FRIENDLY PIONEERS
#22
1%のサステナブルをすべての人に
北極圏のセイウチを救う方法としてはじめた情報発信
ーーまず初めに、RYUさんについて教えてください。
横浜で生まれ育って大学に進学をして、会社員として不動産関連の企業に就職しました。3年ほど勤めたあとで会社を辞めて独立をして、WEBメディア事業を軸に起業するような流れでした。
実は、中学1年生の時に自分で初めてホームページを作ったという経験があって、それなりにアクセスが増えてきて、月10万PVになりました。これは何かに活用できるんじゃないかと思って、広告をやって月500円もらえた原体験があります。それを突き詰めて本格的にやってみようかなというのが起業した経緯です。
創業当初は今と違い、ファッション、美容、不動産、占いなど色々なメディアを作って運用していました。2020年にサステナブルとSDGsに力を入れた〈SUSTERRA〉に切り替えました。
ーーきっかけはあったのでしょうか?
2020年にNetflixで配信されていた“Our Planet” という世界中の自然や動物を撮影したドキュメンタリーがあって、それをきれいな映像美として楽しんでいた時、温暖化の影響で北極圏の氷が解けてセイウチが大量に陸に押し寄せて1匹ずつ崖の上に登って落ちていくシーンがあったんです。
衝撃でした。北極圏に住んでいるセイウチをどうしたら救えるのかなと考えたら、遠く離れた日本に住んでいる自分1人で節電をしていても、救えるのかというのが疑問で。だったら、僕と同じように問題意識を持つ人を増やすことが、重要なんじゃないかなと思いました。事業として情報発信をしていたこともあって、これなら自分も貢献できると思って、じゃあやろうということで〈SUSTERRA〉での積極的な情報発信をはじめました。
「0%(無関心)」から「1%」へ、関心度もバラバラだからオモシロイ
ーー「1%のサステナブルをすべての人に」というコンセプトは、初めから決めていたのですか?
そうですね。コンセプトは始めてすぐに固まった感じでした。前にも述べた通り、自分1人の節電では温暖化を止めることはできないので、無関心の人に関心を持ってもらうっていうアプローチが1番重要です。でも、サステナブルの押し付けとか、「すべてサステナブルじゃないとだめだよ」というより、1個だけでもというニュアンスです。
それこそマイボトルを持ち歩くだけで、他は何も出来ていなくても、まずはいいと思っています。サステナブルってなにかと「プラスチックをやめよう」「なるべく車に乗らないようにしよう」みたいに、何かをあきらめる…みたいなメッセージとして受け取られてしまいがちです。でも人の心理として「我慢しよう」というメッセージは行動を起こす動機になりづらい。
人が行動を起こすのに「楽しい」とか「おしゃれ」といった要素は不可欠です。100%完璧な選択肢を提示しても「自分には無理だから今のままでいいや」と思われたらその人は0%のままです。たとえ不完全でも、1%だけ行動に移せたなら、その行動は地球にとって1%はプラスになる。私が「1%のアクション」を重視しているのはこうした理由です。
ーー情報の一方的な発信だけでなく、コミュニティもあるのですよね
はい。2020年から自分でサステナブルな事業をやってみたいといろいろ考え始めたのですが、考えすぎて、それってサステナブルなのかな?それは事業性があるのか?と疑問に思って結局見つからず。もしかしたらサステナブルに関心を持っている人たちの集まる場所を作れば、仲間と共にアイディアを出し可能性が広げられるのではないかと思いました。
コミュニティメンバーには学生もいるし、会社員の方、子育てされている方、サステナブルなビジネスをされている経営者の方など様々な方が集まっています。サステナブルへの関心度合も人によってばらばらで、SDGsって最近聞いたからなんとなく興味持って入ってみた方もいれば、ゼロウェイストな生活を実践されている方もいらっしゃいます。そのバラバラを盛り上げる役割りも難しいけど、結構オモシロくて、コミュニティ運営力にも磨きをかける日々です。
昔から日本で愛される「ヘンプ」で叶えるサステナブルファッション
ーー〈O0u〉とのコラボが決まった際、「ヘンプ」にこだわったものづくりを強く希望されていましたが、どんな理由があったのでしょう?
情報発信を続ける中で、どういう素材がサステナブルファッションと言えるのか、環境負荷が低いのか調べました。そこでヘンプについて知り、偏見なく調べてみると、「こんなすごい植物があるのか!」と思ったんです。
水を管理して与えなくても、農薬を使わなくてもすくすく育つし、収穫したすべての部位が無駄なく活用できる。種からはミルク、絞ればオイル、茎からは、洋服や建築材料と、洋服を作るためだけに栽培しなくて済みます。
ーーそんなに優秀な天然素材を知らない人が多いのはもったいないですよね
そうなんです。サステナブルという文脈では、往々にしてテクノロジーを駆使してサステナブルな社会を実現しようと語られることがあるのですが、結局、原料調達するためにアフリカまで行って強制労働が行われるという別の問題が生まれるみたいなことが多々ある。でもヘンプはどんな気候でも栽培ができるので、そんなことをする必要がありません。実際、戦前には日本中で多くの麻が栽培されていたわけですから。特に日本は世界でも類を見ないほど文化や伝統と麻が密接に結びついてきた国です。麻という、日本で昔から使用される優れた生地、洋服に袖を通して、ヘンプの素晴らしさを知ってもらいたいです。
我慢ではなく、おしゃれきっかけではじめて欲しい1%のサステナブル
ーーぜひ今回のコラボアイテム、Tシャツとキャップのデザインポイントを教えてください
自分自身がオーバーサイズ目のものが好きなのもあるのですが、体のボディラインが出づらいようにオーバーシルエットで、ジェンダーレスを意識したデザインにしました。
普段から、サステナブルファッションを中心に選んでいるのですが、「サステナブルだけどこれはおしゃれなのかな?」と思うことがあって。(笑)環境にいいから買おうとする人はサステナブルに関心がある人だけで、無関心な人はおしゃれかどうかが買う動機になると思うので、無関心の人にも選んでもらおうと思ったら環境にやさしいだけじゃ不十分です。
だから楽しさや、おしゃれだと思えるデザインを目指しました。一方で、奇抜過ぎるデザインはトレンドによって陳腐化してしまう可能性があるので、バランスを話し合って作りました。
キャップにおいては100%ヘンプなのですが、麻には消臭効果、抗菌効果、通気性もいいという特徴もあり蒸れにくいです。キャップは一番普遍的なアイテムで、いつの時代も通用するアイテムです。サイズも調整できて日よけにもなるので、女性もぜひ使ってもらいたいです。
ーー最後に読者に「1%のサステナブル」を踏み出すためのメッセージをお願いします
SDGsの認知度は高くなってきたけど、実践している人はそんなに増えてない。ということは、サステナビリティに対しての偏見とか、ネガティブなイメージとかがあると思うんですよ。何か我慢しなきゃいけないっていう思いがある人がいると思います。でも我慢するではなく、楽しい、おいしい、おしゃれみたいなもので取り組めそうなことを探してみるのがいいのかなと思います。
その次のハードルが、友人、家族、同僚サステナブルに関心を持っている人がいないということ。サステナブルに関する話ができない。何なら意識高いね位言われて否定されることもある。そういった理由でコミュニティを作ったというのもあるので、新しく一歩踏み出す人を増やしていくこと、踏み出せた人とつながりを保っていく活動を〈SUSTERRA〉として今後もやっていきたいなと思います。
INFORMATION
〈SUSTERRA〉
「1%のサステナブルをすべての人に」をコンセプトに、エシカル、オーガニック、プラントベースなど、誰でも生活に取り入れやすいサステナブルな情報をSNSやブログで発信している。
■INSTAGRAM : SUSTERRA (@susterra_net)
■公式サイト:https://susterra.net/