INSPIRATIONS
2021.12.24 FRI
ECO-FRIENDLY PIONEERS
#16
環境も文化も"サステナブル"を目指す
〈RI-CO〉というブランドをご存知でしょうか。カップなどの陶器を素材からリサイクルするブランドで、現在は備前焼の作家と手を取り合って製品を手がけています。このブランドを作るきっかけは、環境配慮はもちろんのこと、備前焼という1000年続く伝統的な文化が“持続可能”となるにはどうしたらよいか、を考えたこと。地球の、そして地域の未来を見据えた、新たなチャレンジについて見ていきましょう。
備前焼を取り巻く“環境問題”
日本有数の焼き物産地である、岡山県備前市伊部地区。ここで盛んに作られる備前焼の特徴は、釉薬を使わず絵付けもせず、1200〜1300℃の高温で焼き締めることで土本来の表情を生かす技法にあります。
高温で約2週間も焼き締めるため非常に堅いために壺や大きなカメに、また微細な気孔があり通気性に優れるため花瓶に、さらに細かな凹凸によりきめ細かな泡ができるとあってビールグラスにと、いろんな器に適した焼き物です。
この備前焼をリサイクルするプロジェクト〈RI-CO〉の立ち上げには、どんな背景があったのか。〈RI-CO〉を手がける牧 沙緒里さんにお話を伺いました。
「実は備前焼は、年間で生産される1割以上がゴミとして廃棄されてしまうのが現状です。というのも、備前焼は、工業製品ではなく作家さんが手がける“芸術作品”。それも火や土など自然の力を借りて作り出す製品なので、どうしてもヒビや欠け、水漏れなど世に出すには足らないものが出てしまいます。“作品”という性質上、B品販売もできませんので、捨てるしかなかったんです。このことに非常にショックを覚えましたね。」
こう聞くと、土から作られた物だけに、焼き物は土壌生分解する物と思われがち。しかし高温で焼かれているため有機物が失われているため、微生物は分解できず、結果焼き物は土に還ることができないといいます。
「土偶や土器が見つかる理由と同じですよ。細かく砕けば砂にはなるけれど、土にはならずそのまま残ってしまうんです。なので、伊部南大窯跡という史跡を見てわかるとおり、古くはただ投棄するしかありませんでした。また現代では処分するにも費用がかさむため、窯元さんの敷地内にうず高く積まれて放置されているのです」
さらには天然資源である良質な土も手に入れにくくなっている。産業として盛んとは言い難い現状の中、こうした問題は伝統文化の存続にも大いに関わること。
「ただ、この処分に困る陶器ゴミを再生できたら、ゴミは出ない、処分費はかからない、資源は窯元に山ほど積まれているので確保しやすいと、いいこと尽くめ。非常にいいサイクルが生まれると思い、やってみることに。ここで生きたのが、私が携わるレンガ作りの技法なんです」
“再生備前焼”で豊かに暮らす
牧さんは岡山にてレンガを生産する企業に勤めています。そのレンガ作りの技法を活用して、廃棄される予定だった備前焼をリサイクルするための素材開発に成功。しかし、備前焼が持つ特徴が、意外な落とし穴となりました。
「廃棄予定の備前焼を100%活用することは難しく、リサイクル材を混ぜることで再生することに成功しました。極力回収した廃材を活用しようと備前焼の混合率を上げると、どうしても水漏れしてしまいました。だったら目線を変えて、水漏れを生かした製品を作ろうと思い、まずできあがったのが“RI-COドリップ”です」
コーヒーを淹れるためのドリッパー“RI-COドリップ”がユニークな点は、通常コーヒーが落ちるためにある穴が見当たらないところ。それなのにお湯を注ぐと、ちゃんとコーヒーが抽出されていく。これまでにないドリッパーが誕生しました。
「このドリッパーでコーヒーを淹れると、まろやかさや酸味が引き立った味わいになるんです。備前焼に使われる土は収縮率が高く、それにより混ぜたリサイクル材も分離せずに一緒に縮めてくれる作用が生まれ、それが作用したことで味わいが引き立つ。味覚センサーによる試験をして、実際に数字として出た特性なんです」
見た目にも素朴でかわいらしいこのドリッパーは、備前焼廃材の利用率が最大68%。回収した備前焼廃材を使い切るために次に作ったのが、淹れたコーヒーを飲むのに不可欠なマグカップだ。
「ドリッパーは再生素材を砕いたときに出る欠片のうち大きい粒を選んで使うことで、水が通りコーヒーが入れられる仕組みに仕上げました。一方で残った小さい粒ですが、捨ててしまってはリサイクルブランドとしては残念。そこで開発したのが“RI-COマグ”です。
このマグカップの備前焼廃材利用率は約30%。別材の混合率を上げることで、水漏れしない物を作ることができました。回収した備前焼陶器ごみをしっかり使い切るために、ドリッパー、マグカップ、それぞれの特性に合わせて備前焼廃材を使うよう工夫しているんです」
さらにタンブラーやカップに入れると、備前焼の力によってコーヒーの味わいを引き立てる“珈琲玉”も作成。3つのアイテムを“#再生備前シリーズ”と銘打ち展開。〈O0u〉でも、このサステナブルな取り組みに惹かれ、ラインナップしています。これらアイテムは、万が一割れて使えなくなっても、もう一度素材としてリサイクルできるというのもポイント。素晴らしい循環の仕組みを備えるシリーズなのです。
〈O0u〉と〈RI-CO〉のコラボレーション
〈O0u〉が非常に魅力を感じた、この“#再生備前シリーズ”。いろんな“サステナブル”の形を応援すべく、コラボ製品を発売することになりました。ここからは、そのアイテムを手がけてくださる備前作家、乗松美歩さんと、同じく備前作家でご主人の大饗利秀さんにもお話を伺いました。
「〈RI-CO〉の取り組みをはじめて知ったのは、新聞でした。備前焼を再生するということに対して、はじめは『そういう時代なんだな』くらいにしか思いませんでした。
ただ備前焼も地球環境の影響を少なからず受けているんです。備前焼の模様を表現するには藁が欠かせませんが、近年台風が多いことから短い稲に改良され、模様の出具合に影響しています。また美しい色を出すためには赤松の薪が必要なんですが、赤松を切ってくれる林業の職人さんが減っているため、薪が徐々に不足しています(大饗さん)」
こうしたこともあって、〈RI-CO〉と〈O0u〉の取り組みに賛同してくださった、乗松さんと大饗さん。乗松さんの素朴でナチュラルな作風を生かしつつ、自然が作り上げた土の魅力を感じられる製品ができました。柔らかな“ランタンオレンジ”の模様が特徴で、これは藁を接して焼くことで出た反応とのこと。赤ちゃんのほっぺのような、優しい表情となりました。
「はじめは普段触れる土と違うから不安でしたが、いい物ができたと思います。地球はもちろん、備前焼きを取り巻く環境がよくなるよう、互いに高めあえたらいいなと思いますね(乗松さん)」
とても些細で、でも毎日の暮らしに欠かせない習慣に、サステナブルなアクションを取り入れる。こんなところから、サステナブルライフをはじめてみては、いかがでしょうか。
【O0u x RI-CO】コラボアイテム
・商品名:プレート
・素材:陶器(再生素材)
・価格:4400円(税込)
・商品名:カップ
・素材:陶器(再生素材)
・価格:4180円(税込)
・商品名:コーヒーボール
・素材:陶器(再生素材)
・価格:1320円
すべて2021年1月4日より、アトレ恵比寿〈O0u〉POP UP STOREにて先行発売開始。その後、順次O0u.comでの販売を開始予定。
INFORMATION
RI-CO「一杯のコーヒーからやさしさを考える」
Instagram @ri_co_magazine
HP: https://the-continue.com
Edit&Text:八木悠太