PEOPLE
2021.12.10 FRI
MY SUSTAINABLE LIFE
#18
モデル・Miyu“完璧じゃなくていい”
モデルとして活動する傍ら、自身を“サステナブルライフクリエイター”と称し、日常生活と環境問題のつながりや、チャレンジしやすいアクションをSNSやYouTubeで発信しているMiyuさん。サステナブルな暮らしを追い求める彼女が選んだのは、ヴィーガンという暮らし方。そこにどんな思いがあるのか、お話をお伺いしました。
地球にやさしい生き方、ヴィーガン
——Miyuさんが環境問題や社会問題に興味を持ったきっかけを教えてください。
高校生のとき、父の仕事の都合でインドネシアのインターナショナルスクールに通っていたのですが、ある国際環境NGOが作成した動画を見たことです。
お菓子や加工食品に多く使われている植物油脂を生産するために森が切り開かれ、オランウータンの住処が奪われている。そのことに警鐘を鳴らす動画だったのですが、当時の私は大きな衝撃を受けました。普段何気なく食べているものが、環境問題が直結しているとは思ってもみなかったんです。
——そこで意識が変わったのですね。
環境破壊につながると知ってしまった以上、その可能性があるものを食べ続けていいのだろうかと思いました。それまでは自分のことしか考えていなかったけれど、自分は“地球で暮らす一員”だから勝手なことはできないという意識が芽生えたんです。
ちょうどそのころ、通っていた学校の友人や先生が3人、同時期にヴィーガンを始めたことも大きなきっかけでした。
——なるほど。Miyuさん自身がヴィーガンを始めたのはその影響だったのですか?
最初は、ヴィーガンの定義もよくわからず戸惑ってしまって……深入りしたら「私もやらなくちゃ」と思う気がして深く知るのを躊躇していました。その3人もヴィーガンになるよう私に勧めてくることはなかったのですが、彼らの会話が自然と聞こえきました。
たとえば、畜産業と環境問題に深いつながりがあること。飼料の生産や放牧のために大規模な森林伐採がされていることや、家畜の排泄物を処理する過程で環境汚染物質が発生していることなどを知ったんです。
そのほかにも加工肉がもたらす健康への影響や動物倫理についてなどいろいろな事実を知るうちに、いつの間にかお肉や乳製品、卵などの動物性のものを食べる理由がなくなってしまって、高校3年生から少しずつヴィーガンを始めました。
——ヴィーガンな暮らしはサステナブルとも深くつながっているんですね。
動物愛護のイメージが強いかもしれませんが、それだけではなく環境問題の緩和にもつながる。地球にやさしい生き方なんです。
できる人が、できることを、できるだけ
——Miyuさんの発信は、気軽でライトな内容が多いですよね。
ヴィーガンって、動物の残酷な映像を使って広めようとする人というイメージがついてしまっていて、誤解されていたり悪い印象を持たれたりすることもあるんです。だからこそ私は、あえて楽しく、気軽に見られて、かつ挑戦するハードルが自然と下がるような発信をしようと意識しています。
ヴィーガンは、動物が搾取されているものを可能な限り避ける暮らし方なのですが、“可能な限り”の線引きは難しい。だから、完璧にできる人しかヴィーガンにはなれないと思ってしまう人も多いんです。でも、私自身も完璧なヴィーガンではないんですよ。
——そうなんですね!いい意味で、意外でした。
たとえば、祖父の形見の革ベルトや祖母と母からもらったカシミヤ・ウールの服などは環境保護の観点もあり今も大切にしていますし、あえてそれも正直に発信しています。ヴィーガンを始めた当初は、私自身も完璧にできないことに悩んでいたので、同じような悩みを抱えている人に「それでいいんだよ」と伝えたい。
だから“できる人が、できることを、できるだけ”という言葉をモットーに掲げ、SNSなどで発信をするようになりました。
——なるほど。YouTubeやSNSでの発信以外にはどのような活動をしていらっしゃるんでしょうか?
もともとはモデルのお仕事が中心でした。現在も、100年後に残って欲しいアイテムやブランドのみというこだわりでモデルの活動を続けています。そのほか、WEBメディアでの連載や講演など、さまざまな形でヴィーガンやサステナブルについて啓蒙しています。
なかでも今最も力を入れているのは、飲食店向けの“ヴィーガン導入マニュアル”の作成です。
——そのマニュアルはどのようなものでしょうか?
以前、海外旅行先で行ったステーキ店にもヴィーガンメニューがあって驚いたのですが、日本ではまだまだ普及していないのが現状です。そこで、飲食店がヴィーガンメニューを導入するメリットやその方法を提案するマニュアルを作りました。もともとは、通っていたデザインスクールの課題の一環で作成したものでまだ一部しかできていないのですが、完成に向け作業を進めています。
——なるほど。完成後の展望はありますか?
完成後は飲食店へ向け実際にプレゼンテーションをしていこうと構想中です。ヴィーガンメニューが食べられるお店が増えれば、選択肢が広がってより挑戦しやすくなる。また、時と場合によって可能な範囲でヴィーガンを心がける“フレキシタリアン”という考え方の後押しにもなります。それが最終的に、地球環境の保全につながればと思っています。
身近なことから。それが大切
——普段使用しているサステナブルなアイテムでおすすめのものを教えてください。
今日つけているアクセサリーは、〈GYPPHY〉というブランドのもの。フェアマインドゴールドという、労働者の人権の確保が認証された鉱山で採掘した金が使われています。ストーンも、工業生産される過程でロスとして出たモアサナイト。デザインもかわいいからお気に入りです。
——おしゃれをしながらできることもあるんですね。
今日使っているコスメもちゃんとヴィーガンなアイテムです。ファンデーションは〈California Organic House〉、アイシャドウとリップは韓国ブランド〈DEAR DAHLIA〉のものなのですが、使用感やパッケージのかわいさもポイント。
他にも〈DAMDAM TOKYO〉というブランドの基礎化粧品はとても質がいいのでおすすめですよ。環境にいいというだけでなく、デザイン性や機能性も含めシビアに選んでいるので、ぜひ信じてください(笑)。
——使わなければ、それも無駄になってしまいますもんね。
そうなんです。新しく何かを購入するときは、本当に必要かどうか立ち止まって考えてみることが大切。たとえば私は、洋服なら30回着るかどうかを基準にしています。今日着させていただいたこの〈O0u〉のシャツはベーシックで使いやすいから、30回以上長く着られる……じゃあ買おうというふうに。
“サステナブル”というワードを使うと意識が高そうだけど、使えるものは長く使おう、どうせ買うなら環境に配慮されているものを買おうと噛み砕けば、少し身近に感じられると思います。
——なるほど。そのほかにも気軽に取り入れられるアクションはありますか?
身近なことだと、節電を意識するだけでも地球環境への負荷を軽減することができます。電気供給の大きな割合を占めている火力発電は、環境負荷がとても大きいので…おうちの電力を持続可能エネルギーによるものに切り替えるのもおすすめです。大変そうに見えて手続きは5分でできますし、価格もそこまで変わりません。私は〈みんな電力〉さんの電気を契約しています。切り替えたらあとは普通に生活するだけなので簡単なんです。
もう1つは“ミートフリーマンデー”。ミュージシャンのポール・マッカートニーが提唱している、月曜日だけお肉を食べずに菜食をしようという取り組みです。完全なヴィーガンになるのは難しくても、週に1回だけならとチャレンジする人も多いんですよ。
——まさに、“できる人が、できることを、できるだけ”ですね。
それぞれ置かれている環境や考え、嗜好が違うからこそ、自分自身ができることをできるときにする、という気持ちを常に持つことがとても大切。それが、大きな変化を生む小さな一歩と思います。
少しでもサステナブルやヴィーガンに興味を持ってくれた人が「これなら自分にもできる。アクションを起こしてみよう」と思えるように……そんなきっかけづくりを、これからもしていきたいです。
Profile:
Miyu
“できる人が、できることを、できるだけ” をモットーに、自身のヴィーガン&サステナブルなライフスタイルを分かりやすく発信。地球と人と動物に少しでもやさしく生きられる社会を目指し、モデルをはじめ、記事の執筆や講演、デザイン、イベント企画など幅広く活躍している。
INFORMATION
https://lit.link/tokyovegangirlmiyu
YouTube:https://www.youtube.com/c/MiyuTokyoVeganGirl
Instagram:@tokyovegangirl_miyu
Photo:蓮見徹
Edit&Text:河野未夢(vivace)