PEOPLE
2023.07.13
MY SUSTAINABLE LIFE
#30
Feel Good & Make More Good. Vol.2
2023年7月5日(水)から7月9日(日)までの5日間、「Feel Good & Make More Good.」をテーマに、自然体で心地よく、より良いライフスタイルを提案する場として、O0u 2023Autumn&Winterコレクション展示会を開催しました。
展示会の開催に際し、4名のアーティストとのコラボレーションが実現。O0uの掲げる「自分にも地球にも、素直にまっすぐ向き合う。」というブランドの想いに共感したことをきっかけに、コラボレーションアイテムや展示空間の演出を各々の感性と共にアートとして昇華して表現していただきました。
今回のMe&THE EARTHでは、4名のアーティストの中から、Hyle 村山さんにお話を伺いました。
Hyleは、村山圭さん・山際悠輔さん・吉田竜二さんによる、素材が持つ色素や香り、テクスチャを研究するラボを備えたスタジオ。コーヒー・お茶・ワインといった日常的な食材から、食材自体の“食べること“以外の過程に着目することで、素材を捉え直すきっかけとすることを目指しているプロジェクトユニットです。
そんなHyleのそれぞれの活動への想いやO0uとのコラボレーションについて紐解いていきます。
大人の自由研究がサステナブルに
―現在の活動を始めたきっかけ/活動への想いを教えてください。
僕と山際は空間デザインを主軸に活動しています。
とあるコーヒースタンドの展示空間をデザインするプロジェクトの依頼がきました。お話をいただいたときから会期の始まりまで時間があり、“展示空間の構成の一つに自分たちで草木染めを勉強していき、研究していったものをアウトプットする。”そんなプランを提案しました。その結果、「これは続けた方がいいよ。」と遊びにきてくれた友人や、運営の方々に勧められ、その後も”大人の自由研究”と称して様々な素材でスタディを繰り返し、発表の機会を続けていく流れが生まれたことが今に至るといった流れです。
―活動を通して何を伝えていきたいですか。
僕らは食べられること、飲めること以外でその素材を別のかたちに表現することを主にしています。
コーヒー、ワイン、野菜などの素材そのものを“記号的にみる”のではなく、生産者の手が加わっていることを届けることができたら違った見え方ができるのかなと思っています。
例えば、ワイン染めのキャンバス作品シリーズがあります。
ワインはブショネやマメるといった欠陥臭や酸化によって飲める状況ではなくなり、料理酒として使うか、残念ながら捨ててしまいます。
友人から「パトリックコットンという作り手が引退する年の最後のワインなんだけど、マメっていて飲める状況ではなくなってしまった。」と連絡をもらったことがありました。そのワインをレスキューして、僕らでワイン染めのキャンバス作品として残したのです。
ワインは飲んで愉しむことが大事だと思いますが、生産者が大事に作ったものが捨てられてしまうことを避けられたらと思っています。
ナチュラルワインが好きな人たちだったら、自分の好きな作り手のワインでなにかかたちとして残すことは魅力に繋がるのではないでしょうか。
コーヒーも同様に人がみえてくるものだと思っています。
僕の事務所が代々木上原にあったのですが、その近くには素敵なコーヒースタンドがたくさんありました。それぞれのコーヒーの残渣やテスト焙煎の豆をいただいて、プロダクトをつくることに着目した時期もありました。
コーヒーをコーヒーとしてみるだけでなく、自分たちが好きなコーヒースタンドの素材をもとに、目で見て残していけるモノに昇華できることへ繋がったら素敵だなと思っています。
例えば、これからコーヒースタンドをはじめる人がいて、自分たちの焙煎したコーヒーをカウンターの仕上げの染料にするなどができると、コーヒーという今までのくくりだけでなく、自分たちのオリジナルなもので特別な体験のできる場所へと繋がるのではないでしょうか。
そういった意味でも、様々な素材を用いてプロダクトだけではなく、空間へと表現を広げることに魅力を感じています。
―将来的に取り組みたいSDGS活動があれば教えてください。
近い将来という意味では今回Hyleの新たな作品を2つ、展示させていただきます。
Hyleには今までスタディをしてきたたくさんのテストのハギレがあります。
その布で巻きつけられるタグを作りました。
染めなので一つずつ表情が違い、より自分だけのものになれば嬉しいです。
【傘につける草木染めのタグ】
ビニール傘は傘立てに置くと間違って取られてしまい、気づいたときに悲しくなったり、古びていくと捨てても良いかなと思ったりなど、自分から離れていく気持ちが芽生えてきます。
もちろん穴があいたり、骨組みが壊れてしまったりするのはしかたないですが、捨てるまで少しでも延命できたらと思っています。
【ワインボトルや透明なビンのタグ】
飲み終わった空瓶は回収する前に、飲食店の水入れや花を生けたりと少しだけ生活に寄り添う機会になったり、飲食のロス素材で染めるなどの特別なプロダクトへと発展していけたらと思っています。
これらはまだプロトタイプです。
今後、使いやすさのためにプロダクトのクオリティをあげていくことが僕らのミッションではありますが、一方で、このアイデアに共感した人がアクションしやすいものでもあると思います。
SDGsは2030年までに掲げている目標となっています。前文の一部に、「持続可能で、強くしなやかな世界に向かう道を歩んでいくために、今すぐ大胆で変化をもたらす行動を起こすこと」とも記載されています。
誰かにとってすぐにでも行動できる、補助線として僕らが存在していたら嬉しいです。
ロス豆からニュープロダクトを生み出す
―今回、O0uとコラボしようと思った理由を教えてください。
お話をいただいたときに、「興味はあります。ただプロダクトを染めるだけであれば、草木染め職人さんにお願いする方が良いかと思いますし、Hyleが今回のお話にあっているかがまだわかりません。」とご返答してしまいました。
常日頃から染めに向き合っている職人さんにお願いした方が汎用性がありますし、結果的に求めていることと僕らがミスマッチだと思ってしまったら、いろいろと申し訳ないなと思っていました。
O0uさんとの打ち合わせの中でプロダクトを染めるだけではなく、Hyleが今までやってきた実験的な活動に、共感いただけたことがコラボレーションへと向かうための安心感へと繋がっていきました。
テスト染めの段階や製作プロセスのなかでできることと、できないことをしっかりと共有して丁寧に向き合い、僕らもできる限り良い方法になるにはどうしたらいいかと、できる時間をかけていただけたことが嬉しいです。
今回はコラボレーションのプロダクトに加えて、Hyleとはどんなことをしているのだろうという空間インスタレーションでお見せできる場を設けていただけたことも感謝しています。
今までの僕らのアーカイブも含め、そこから次なる一歩や、素材の面白さへと繋がっていけたら素敵だと思います。
―コラボに関しての特長やポイントをお聞かせください。
今回のコラボレーションのTシャツは1着ずつ手染めしています。
テスト染めと最終的な製作数のバランスから、4種類の色違いになるように製作しました。
染料となる豆の量や、染め時間などを変えていくことで色の違いを出しているのですが、全体としてコーヒー色のグラデーションを見せられたらと思っています。
コーヒー豆は出涸らしを大量に使うことでも染められますが、今回はロス豆で染めています。
とあるコーヒースタンドに協力いただきまして、今回のために豆を譲っていただきました。
僕らは素材を譲り受ける過程自体も重要だと思っています。
エスプレッソマシンに挽いた豆をセットする時、コーヒーの淹れ方によっては1g程度の豆のロスが出てしまいます。そのロスは少量なので本来ならゴミとして捨てていることが多いかと思います。
ごく少量でも、1日に100杯以上コーヒーを提供しているスタンドでは1ヶ月でかなりの量が集まります。その地道な回収を協力いただいて集めることで、染料の素材に繋がっています。
その少量を集めても酸化してしまっているので、おいしいコーヒーとしてお客さんへご提供はできないということもまた食べ物を素材に扱う僕らにとっては重要なポイントだと思っています。
―「環境・社会問題、サステナブルな取り組みについて、興味はあるけどなんだか今一歩踏み出せない...」という読者に対して、メッセージをお願いします。
とあるデンマークの家具ブランドは製作に使用した木を植林することにお金を使うのだけでなく、環境配慮のための啓蒙活動を行っているという話を伺いました。
その環境配慮の話をきいた人が、その後にタクシーに乗るのを一回やめて、公共交通機関を使うことかもしれないし、家に帰ってから無駄な電気を消すことかもしれない。
Hyleは、環境やサステナブルな取り組みを推していく活動グループとは一概に言えないかもしれないですが、今回お披露目しているプロダクトがみなさんにとっての取り組みへのきっかけになったらと嬉しいと思っています。
もちろん時間をかけて考えていくことはとても重要なことですが、今すぐにアクションできること、そして負荷とは思わないくらいの容易な行動の先に、自分にあった環境や社会問題への取り組み方へも繋がっていけるのではないでしょうか。
もしHyleの活動に興味を持っていただける方がいましたら、なにかご一緒できたら嬉しいです。
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PROFILE
■Hyle(ヒュレー)
Hyleは、村山圭・山際悠輔・吉田竜二による、素材が持つ色素や香り、テクスチャを研究するラボを備えたスタジオ。コーヒー・お茶・ワインといった日常的な食材から、食材自体の“食べること“以外の過程に着目することで、素材を捉え直すきっかけとすることを目指す。様々な素材の実験により、空間やプロダクトをつくる可能性を探究している。今回の展示会においては、廃棄予定だったコーヒーグラウンズによる染めで、やさしい彩りをもたらす。
公式インスタグラム: https://www.instagram.com/hyletokyo/