INSPIRATIONS
2022.03.08 TUE
ECO FRIENDLY PIONEERS
#20
持たない、という豊かさ
明るくエネルギーに溢れた笑顔が印象的なエリさんとサイナさん。大学時代にカナダのバンクーバーで、出会ったというお二人が、拠点を日本に移し、お互いに子どもを持ってから「日常生活の中に溢れる、使い捨てプラスチック製品や、それに伴う大量のゴミ問題を少しでも改善できないか」と思い、立ち上げたのが〈minimal living tokyo.〉。
無理をすることなく、等身大の生活の中に溶け込むような、エコライフ雑貨のラインナップを取り揃える〈minimal living tokyo.〉のプロダクトに込められた想いを紐解いてみましょう。
「足を知る」という大切なベース
ーーまずははじめに、〈minimal living tokyo.〉の成り立ちやコンセプトを教えてください。
帰国後も、子供の年齢が近いこともあり、たまに会って一緒に遊ばせたりしていて、ある日「エコ生活」の話題で盛り上がったんです。バンクーバーに住んでいた頃は、当たり前に買うことができた有機や裸売りの食材を含め、「どうしてエコな生活をするのが日本ではこんなに難しいんだろうね?!」って。もともと2人とも環境や、食に対する意識は高い方でしたが、きっと同じように感じている人が、自分たち以外にもいるはずだと思いました。
「そうだったら、生活の中で必要なサステナブルな消耗品を自分たちが販売したら、結果自分たちもハッピーで、他の人もハッピーになるよね!・・・じゃあ二人で始めちゃう?!」という気軽な気持ちで始まりました。その夜には、ブランド名を考え始めて「環境負荷を小さくしながら本当に楽しい生活をする、「足るを知る」をベースに持たないという本当の豊かさを得る」という意味を込めて 〈minimal living〉そして「何もかもが便利な巨大都市東京だからこそできるサステナブルなアクション、誰でも今すぐにできる簡単なことを発信していく」という意味を込めて〈tokyo.〉で、〈minimal living tokyo.〉に決まりました。
ーー「持たないという本当の豊かさ」を楽しむライフスタイルの実現に向かって、お二人が道標になってくれているように感じます!
そうだといいなと思っています。今もそのメッセージを広めるために、多くの人のエコライフのきっかけ作りをしています。「こんなに簡単なんだ!」と感じて心から楽しんでもらい、エコやサステナブルな選択ができるマインドにより多くの人がシフトしていってくれたらと思っています。それもあって、オンラインストアだけじゃなく、イベントやポップアップにも積極的に出店して、色々な人に会って話す機会を作ったりして、私たちが目指すライフスタイルのことを出来るだけ多くの人に自分たちから直接伝えられるようにしています。
ーー 実際に〈minimal living tokyo.〉のプロダクトを手に取るお客様はどんな方が多いですか?
お客様層は本当に色々で、昔からヘチマを育てて、風呂敷をずっと使っていましたという「元祖エコ」っぽい人もいれば、若い時から環境活動をしていてエコ生活が当たり前っていう人もお客様の中にはたくさんいますね。ある有名人やインフルエンサーの投稿を見て興味を持ちましたっていうZ世代率も高いし、あとは今まで全く興味がなかったけど子供が生まれてから将来のことを考えるようになったっていうママもめちゃくちゃ多いです。みんなそれぞれ、もちろん自分や家族が将来生きる環境のためっていうのは共通していますね。
最近は、メディアでもプラスチック汚染の深刻さや、SDGsが絡んだトピックがたくさん取り上げられているので、全く環境のことに興味のなさそうな高校生や、プチプラばかりを追いかけていそうなギャルが、ものすごく真剣に気候危機の話しているシーンを目の当たりにして、逆に私たちが彼らから学ぶことがとっても多い気もします。今の日本ではSDGsがトレンド化していることも大きなきっかけの一つになっているかもしれないですね。
売ることの責任
ーー 具体的に〈minimal living tokyo.〉ではどんな基準でアイテムセレクトを行っているのでしょうか?
そもそも、〈minimal living tokyo.〉で販売している製品は、資源調達・生産背景・労働環境・製品寿命・最終破棄方法、また配送時のエミッションコストなど、さまざまなチェック項目から、本当に必要であると判断したもののみを販売しています。
買うことと同じくらい、売ることも責任。そして、買っていただいた場合には、それを使う責任がありますよね。だから、オンラインサイトでは、それぞれの製品ページに詳しい使用方法や、どうすればできるだけ長く使い続けることができるか、さらに使い終わった後の処理方法や壊れてしまった時の修理方法なども記載しています。ほとんどの製品が天然素材でできているので、大体のものは最終的に土に還せます。
ーー 販売だけにとどまることなく、他にもプラスオンで多くのことを発信なさっていますよね。
はい、そうなんです。日常的に買うものの選択肢を考えるっていうのも当たり前なのですが、ブランドを通して「食」にまつわる発信も頻繁にしています。“You are what you eat ー自分の身体は食べるものでできているー”と言われるくらいなので、可能な限り有機食材を選んだり、フードロスが出ないように必要な分だけを量り売りで買ったり、お肉の消費を減らしたり、基本的だけどマイバッグやマイ容器、タンブラーや水筒は常に持ち歩いていたり。地産地消もとても大事なのでファーマーズマーケットを利用したり、生ゴミをコンポストするのも、ゴミは減るし、肥料はできるしでWin-Winかなって。こういう日常生活の中でヒントになる「Tips」見たいのをインスタやブログ、ニュースレターで毎週発信しています。
〈minimal living tokyo.〉では現在、第1期のゼロウェイストアンバサダー4人の方に在籍してもらっています。それぞれ違うバックグラウンドを持ち、違う職業についている社会人で、「サステナブルな生活がしたくてそれをSNSで発信している」というのが共通点です。
主にブログを更新して気になるトピックについて書いてもらったり、私たちが参加するイベントやマーケットに一緒に出てもらっています。あとは、気になる製品を試してもらって正直な感想などをインスタグラムなどでレビューしてもらったり。ヴィーガン料理のレシピが得意な人や、古着をこよなく愛する人や、クルエルティフリー・アニマルライツに熱心な人など、本当にみんな楽しくて素晴らしくて、もうすっかりファミリーみたいな感じです。
長く使うために必要なときめき
ーー 今回、〈O0u〉のPOP UP STOREでお取り扱いすることになっているアイテムには、どんなこだわりがありますか?
〈O0u〉 の洋服は、流行りの PIECEというよりも、タイムレスに着られるようなイメージがありました。だから、そういうところでお買い物をされていかれる方って、すでにエコ知識もある人なのではないかと感じています。だから、気軽に生活に取り入れやすい商品でもあるし、持っていてちょっとオシャレな気分になれる商品を選びました。洋服も同じだと思いますが、持っていることでウキウキしたり、ときめきがあるのって長く使うためにすごく大事だと思っていているので、今回セレクトさせてもらったアイテムはそんな気持ちが湧いてくるラインアップになっています。
他にも今後は、色々な意味でサステナブルな商品が、気軽にアクセスしやすい存在になってほしいと思っています。それは価格帯もそうですけど、販売する場所や商品数の幅広さなど色々な観点からも考えています。今はトレンドっぽくまとまっていて、やっぱり環境に配慮した生活雑貨やコスメってスーパーやーコンビニで手に入るほど根付いてはいないんです。もっともっとたくさんの人の目にとまり触れてもらえる場所に進出して、たくさんの場所で選択肢として当たり前になっていくブランドになりたいですね!
〈minimal living tokyo.〉のビッグピクチャー
ーー 将来的に、ブランドとして取り組んでいきたい活動の構想を教えてください。
エリさん:
私の夢は学校なんですよ(笑)。しかもオンラインとか講座とかではなく、日本のゴリゴリに凝り固まった義務教育を根こそぎ変えて、本当に必要なことを、本当に知っている人が教えることができる学校。子供たちの未来を型にはめたり、制限したりしない教育の場を夢見ています。
まぁでも、流石に乗り越える壁がハンパないので、今できる直近のこととして、たくさんの人が、今人類が直面している「気候危機」という問題に向き合い、自分ができることを明確に洗い出す機会を作っていきたいです。この問題が、ただの地球温暖化だけではないこと、私たち1人1人の毎日の小さな選択が全て、経済を動かしていて、それが結果としてポジティブかネガティブか。そもそも選択肢があることがどれだけ恵まれていて、だからこそ選択肢を持たない人たちのためにも、自分の行動に責任を持たなくてはいけないことを伝え続けています。
サイナさん:
私は、Regenerative Organic Farming 土壌再生型有機農業に興味があります。食の循環=健康な土壌の循環=地球の循環なんです。本当に全ては健康な土から!今の産業はあまりにもひどすぎる。その場の低コストと生産性にだけ集中して、まるで土壌を使い捨てにしているものばかりです。本当に食糧危機はもうすぐそこまできてますよね。
2人とも、構想というか超ビッグな夢を語ってしまったけれど。常に2人でビッグピクチャーを持って、それに向けて今できる一番ベストなことを、全てやっていけたらって感じで活動しています。
セミナーやワークショップ、コラボイベントなどを通して、私たちと同じようなビジネスをしている企業ともどんどんタッグ組んでやっていきたいですね!不思議なことに、エシカルビジネスをやっている人たちって本当にエネルギッシュなんです。会った瞬間にそれがお互いに伝わったりして、何か一緒にやろうってなったら本気で国を動かせるんじゃないかと思います。
人の健康と地球の健康は繋がっている
ーー 〈minimal living tokyo.〉や〈O0u〉との出会いをきっかけに、今日から一歩を踏み出す人にメッセージがあればお願いします!
シンプルに「人の健康と地球の健康は繋がっている」ということを知ってもらえたら嬉しいです。地球の状態がよくなければ、自分も絶対に健康にはなれないんです。Holistic という言葉がまさにそうで、あらゆる状況が健全でないと何事もうまくいかない。仕事で成功しても、家を建てても、子供の将来を夢見ても、このまま環境破壊が進んで人類が地球に住めなくなれば、もはやお金すら一円の価値もなくなってしまいます。
そう考えて毎日を過ごすと、日常生活の中にある数々の選択肢や、次の行動が明確になってくる。本当に自分に良いことは、巡りめぐってきっと地球にいいことでもあるんです。
ーー 小さなアクションが、大きな地球を守る一歩や、幸せな未来になりますね。
サステナブルなアクションや取り組みって「ハードルが高い」とか「意識高い系の人がすること」っていうイメージがあるけど、全然そうでもなくて、本当に簡単なこと。エコなことをしようと思い立って環境に優しそうなグッズを買い揃えるのではなく、まずは家の中のものを大切にできるだけ長く使ってみるのが一番のサステナブルアクションです。
そのあとは、自分なりにリサーチをして知識を集め、色んな人と話をしてみるのもとっても大事です。問題を知った上で、じゃあ自分に今できるのはこれとこれ、ってわかったら迷わず実践。できることは山ほどある、答えもひとつじゃない、自分にもプラスになる、ってなったらやらない理由はない!ってなります。問題は深刻だけど、自分のアクションは重くとらえずひとつひとつゲーム感覚でクリアしていくのもおすすめですよ!
INFORMATION
minimal living tokyo.
"ZERO WASTE "( ゴミを「減らす」「なくす」というようりも、物自体が「ゴミにならない」ように工夫し、生産の段階で見直すこと)をコンセプトに、最終的に土に還せるものや、繰り返しずっと使えるものをセレクトしたアイテムをラインナップ。製品の生産背景、輸送時のエミッション削減、ヴィーガン・オーガニック・天然由来の原材料、製品パッケージのミニマルさやコンポストできるかなども考慮している。
HP:https://minimal-living-tokyo.com
Instagram:https://www.instagram.com/minimalliving.tokyo
Photo:提供 minimal living tokyo.