FASHION
2022.06.03.FRI
Inside O0u
#06
能登"再生ポリエステル織物"
〈O0u〉では、すべての人にとって心地よくあるために、「地球と生きる」というものづくりのあり方を追求し、全商品にサステナブルファブリックを使用しています。
積極的に使用している素材の一つに、「再生ポリエステル」があります。これは、廃棄されたペットボトルを「ファッションアイテム」にアップデートしている一例で、サーキュラーエコノミーを実現しています。
その地球に優しい技術を支え、再生ポリエステル由来の糸を織っているのが、今回取材させていただいた丸井織物株式会社(以下、丸井織物)です。
今回は、〈O0u〉のプロダクトの価値を高めている世界にも通用する織りの技術を、丸井織物の社員の方々のお話とともに紐解いていきます。石川県の能登に広がるのどかな風景とは裏腹に、先進的でメカニックな工場を取材しました。

〈O0u〉の白いシャツ。再生ポリエステル素材が風に膨らみ、なびく美しいシルエット
NOTO RECYCLED POLYESTER COLOR SHIRT

丸井織物(株)の織物工場から少し車を走らせたところに広がる〈神子原の里〉の風景
再生ポリエステルの織物とは
日本国内では、たった60秒の間に100万本を超えるペットボトル製品が消費されていると言われています。この状況は世界的に見ても、ものすごい量の消費になります。「再生ポリエステル」は、このような問題を抱えるペットボトルなどをリサイクルすることで生まれる繊維のことです。
透明のペットボトルを日本国内でリサイクル回収している理由は、海外では一般的なカラーペットボトルなどが混入していない、白度の高い糸を安定して提供するためです。不純物が少ないため、見た目の美しさはもちろん、石油からつくるポリエステルと品質的にほとんど差がない繊維をつくることが可能です。 国内のペットボトルリサイクル率の向上にも寄与しています。
再生ポリエステル生地には、多くの特徴があり、耐久性・強度・伸縮性が高く、形状安定性に優れているのでシワになりにくく、型崩れを起こしにくいというメリットを持ちます。それに加え、吸湿性が低く速乾性が高いので、サラサラとした肌触りも特徴の一つです。光を透過しづらく、紫外線を防ぐ能力を持っているのも人気の理由です。

ペットボトルをリサイクルして使用して作られた〈O0u〉のアイテム
能登で発展した合成繊維の織り技術
今回取材した丸井織物は、〈O0u〉の再生ポリエステル素材のウエアの生地の生産をしています。丸井織物の監査役であり、創業からの歴史を知る古澤久良さんにお話を聞きました。
「丸井織物のある石川県中能登地域では、七尾から羽咋までの辺りが織物の産地と言われています。合成繊維が増えてきた昭和30年代に、メーカーが糸を売るためには、織物にした方が糸を沢山使えることから、自分達の糸を織物にして拡大しようとし、出資して多くの委託加工の機屋を作ったのがはじまりと言われています。」

今回、お話を聞かせてくれた監査役の古澤久良さん
また、湿度が高い能登の気候が、織物の発展にも大きく関係しており、静電気の起きやすい合成繊維の糸も能登では織りやすかったと言います。
「小さな機屋さんがかつて三つの町で1000件くらいあったんですよ。今では100件に満たず、その数は昔に比べて10分の一になっています。日本国内で生産するよりも海外から輸入した方が安いという理由で、アパレルの仕入れが盛んになり、日本の機屋さんが減っていったとされています。」
その中でも丸井織物は、「自社で6万種類にものぼる生地を開発して、新しい機械を入れ、最先端で生産できるように維持してきたため、ここまで長く能登で生産を続けられているのかもしれない。」と古澤さんは笑顔で教えてくれました。

長く、真っ白な糸がピンと張られ、それがリズミカルに巻き取られていく
世界に通用する"能登クオリティ"
丸井織物の強みは、1980年代から強化し続けている「他社にはない開発力」だと古澤さんは続けます。
「はじめの頃は裏地などのベーシックなものを作り続けていましたが、その技術を深め、難しく高度な織物をどのようにしてコストをあまりかけずに作っていくかというところに一番力を入れていました。」まさに、新しい織物の開発です。
当初は古澤さんがひとりで開発をはじめ、課題を解決する中で社員が増え、関わるお客さまが増え、設備の増加や新たな織物への挑戦など、多彩なことをやっていくようになったそうです。現在導入されている織り機は、なんと1100台。丸井織物は、自社開発の生地とパートナーとしての委託加工開発の両方を並行して行っています。

丸井織物、サイジング工場内の様子。整経機がそれぞれのデータを読み込み稼働している

均等な間隔で流れていく糸は、アートのように美しく圧巻

データで管理され、ほとんど人がいない工場で何千もの糸が整列され、整経機まで伸びる

糸が巻かれた大きなビームの最後の工程

真っ白な糸が、再生ポリエステル生地へ

最後に、生地に不良箇所がないかを目視で確認
糸と密度、組織で広がる無限の組み合わせ
「織物って糸と密度と組織で無限の組み合わせがあるんですが、少し変えただけで風合いも変化したりと、すごく面白くて。アイデアの出し方が無限大だなと思います。」こう語るのは、テキスタイル開発部で18年間織物の設計企画をされている磯見さん。織物に携わる中で、先を読んでクライアントと一緒にするものづくりを楽しんでいると言います。
「開発は、既にあるものに新しい要素を加えていくやり方をとっています。皆さんグレードアップしたものを作りたいと思っていらっしゃるので、今あるものにこういう機能を足したいなど、お互いに話し合いながらやっています。7、8年やっていると、お客さんと目線を併せながらやれているなと感じますし、こちらからの先を読んだ提案で自主開発をどんどん行っています。」

〈O0u〉のプロダクトの開発にも携わる磯見亜紀奈さん
〈O0u〉のプロダクトに使用している糸へのこだわりも語ってくれました。
「再生ポリエステルの中でもペットボトルのリサイクル素材が多くあるのですが、〈O0u〉のプロダクトには、真っ白な白を出すために、糸屋さんにお願いして作ってもらっているものを使っています。透明のペットボトルだけを使用し、糸として再生される段階から 技術を駆使して白度を高めたリサイクル糸を使っているので、高品質で白度の高い生地を提供できています。」
〈O0u〉で使用している素材は、丸井織物が糸屋さんと連携して作った特別な糸を使うので織るのが非常に難しく、強度が増すようにテストを重ねたり、糸が絡みにくいように設計を工夫したり、経糸に“糊付け”という作業を施し糸の強度を上げたりと、工夫を重ねながら良いものを生み出し続けています。
さらに、「お気に入りの洋服を長く着用していただきたい」という想いもあるので、素材を超寿命にする工夫をしているところもポイントだそう。
「擦りの強度を上げているため薄めの生地でも、5万回擦っても穴が開かないんです。例えば脇の下で一日10回擦れたとしても、一年3650回、10年でも3万回なので、より長く愛用できるというのも、サステナブルで優秀です。ストレッチ性も高く、速乾性もあり、ものによっては撥水加工も付いています。こんなにいい素材はなかなかないです。」
ペットボトル何本分?
2023年O0uで扱う丸井織物の生地には、全幅1M辺り、500mlペットボトルで3.28本分のペットボトルが使用されているとのこと。こうやって聞くと、ペットボトルのリサイクルが身近で、楽しくなっていきます。
「毎日着るお洋服なので、お客様には再生ポリエステルの取り扱いのしやすさを感じてもらいたいと思っています。お気に入りのものを長く着てもらいたいですし、能登で作ったものを皆さんに着ていただけるのはとても嬉しいです。」と磯見さん。
どんな人にも地球に優しいファッションを楽しく
最後に、丸井織物のみなさんに、〈O0u〉を着ていただき、写真を撮らせてもらいました。年齢、体型、性別はさまざま。それぞれがユニークに、お似合いのスタイリングを見せてくれました。

丸井織物で働くみなさんの着こなし (左から、直塚さん、古澤さん、磯見さん、加藤さん)
能登という地で、丸井織物のみなさんが日々の開発と技術力の向上をしているおかげで、ペットボトルは美しくリサイクルされ、サステナブルファブリックが完成します。どんな人にも楽しんでもらえるサステナブルウエアが、この取材を通してさらに眩しく見えました。
INFORMATION
丸井織物株式会社
石川県能登にて1100台もの織り機を備え、ポリエステルやナイロン等の合成繊維を材料に、高機能・高品質のテキスタイルを生産。その他にも「織る」をコアとするモノづくり技術とITテクノロジーの融合により次世代事業を創出させ、世界に飛躍するユニークな繊維企業。
Instagram:https://www.instagram.com/marui_noto/
Writing : Yukari Fujii
Photo: Ryo Kawano