INSPIRATIONS
2021.04.27 WED
ECO FRIENDLY PIONEERS
#21
"リサイクル硝子"偶然の美しき再生
透き通る美しさを持ち、見る角度で表情を変えながら光り輝く硝子の器やグラス。菅原工芸硝子は、創業から90年。〈Sghr〉のロゴに見覚えのある人も多いのではないでしょうか。食卓を豊かにしてくれる硝子食器の数々は、私たちの日常を楽しませてくれています。
菅原工芸硝子は、来るべき創業100周年に向け「RECYCLE」というキーワードを元に、天然素材がゆえに生まれてしまうデメリットを再生させるプロジェクトを2017年にスタートしています。〈O0u〉では、その考え方や、ものづくりのこだわりに共感し、〈Sghr Recycle〉の花瓶や、器、グラスなどを2022年4月28日より期間限定でセレクト販売することになりました。資源を大切にものづくりと向き合う姿勢を、その歴史とともに覗いてみましょう。
手仕事だからこそ表現できる、硝子の表情
今回の取材で訪れたのは、千葉県九十九里に位置する菅原工芸硝子の工房。敷地内には、工房の他にSghr café Kujukuri や、全国で最も多くの製品を取り揃えるファクトリーショップが併設されています。
「創業は1932年です。僕の祖父が北海道から単身で東京に出て来て、最初に入ったのが硝子屋さんでした。その後独立し、1932年に江東区亀戸で硝子の工場を起こしたのがスタートです。最盛期は地域の60社くらいがひしめき合っており、地場産業みたいなものでしたが、下町で狭い工房よりも、大きな釜や作業スペースを構えやすい環境が良いと考え、1961年からこちらに移ってきました。たまたま祖父がこちらにお花見をしに来て、良いところだと移転を決めたそうです。稼働したのが1962年なので、ちょうど60年になります。」
そう話すのは、三代にわたって菅原工芸硝子を受け継ぐ、代表取締役社長の菅原裕輔さん。九十九里に移転したきっかけがお花見だったこともあり、敷地内には所々に桜の木がありました。
創業から今も変わらず手仕事にこだわられている理由は、シンプルに「硝子だから」と菅原さんは語ります。
「硝子を作る際の、柔らかいからこそ生まれる、流れるような曲線を大事にしようと思うと、機械ではなく手吹きでしか生まれません。硝子ならではの表情を作ろうと思うと、必然的に手仕事になるということです。」
〈Sghr〉ブランドの製品は、多くの技法を使い分けて手作業を行っているからこそ、一つひとつに流れるような曲線と個性があります。職人が一点ずつ手に取り、圧倒的な技術力を活かして繊細な調節を加えているところに、製品の完成度の高さと人気の理由があります。
廃棄されてきたものに、新たな輝きを作る
創業100周年に向け、「つながる」をテーマに様々な活動に取り組んでいるている菅原工芸硝子。有限な資源を使う立場として、ものづくりを持続させていくために考えられてきたことがあるそうです。
「硝子の原料は砂で、まさに地球の資源です。日本の国土が狭いという理由で私たちの砂は海外から輸入をしているのですが、有限な資源を使わせてもらう仕事として、それをどう大事にしていくかを考えなければならないというのは、必然的なことでした。」
「硝子の原材料は、天然素材でもともと再利用性が高い素材と言われています。これまでも社内で出る「硝子くず」は同じ色で集め再利用してきましたが、〈Sghr Rework〉のプロジェクトがスタートしたのは、2014年。色が混ざったり不純物が含まれた硝子は、これまで年間200トンも廃棄されてきたため、それをどうにかできないかと、柄を施したり違う加工をして、正規の価格で販売する取り組みをはじめました。」
想像できない、偶然の色との出会い
これまでは廃棄されてきたものを蘇らせるため、その特性を生かしながら新しい輝きを作る。これからの硝子産業に、新たな可能性を感じさせてくれるプロジェクトです。
色が混ざってしまったものや、作業時にやむを得ずパイプなどの鉄分が一緒に入ったものは、硝子にとって鉄が天敵であるために処分しなければならなかった現実。そういうものをもう一度活用できないかとスタートしたのが〈Sghr Recycle〉です。
「これまでにも世界では硝子のリサイクルが行われてきましたが、硝子をもう一度溶かす過程で泡が入るなど難しい部分があり、完全に元通りにするのは難しかったです。」と菅原さんは語ります。
それでも「元通りにならない」部分をポジティブに捉え、あらゆる条件によって変化する色の出方を楽しめるようにと試行錯誤を続け、コントロールできない偶然の美しさを魅力として販売をはじめています。偶然の色との出会いは職人でさえも予測できないというところは、まさに一期一会です。
今まで見捨てなければいけなかったものを蘇らせる取り組み。人間一人ひとりに個性があるように、一つひとつの違いに美を見出し、それが大切にされるような時代になってきている表れでもあるのではないでしょうか。
これからのサステナブルなものづくり
「一点の曇りもない硝子=いい硝子というのは、これから変わっていくのではないかと思っています。今問題になっているのは、硝子を綺麗に見せるためにリチウムなどの鉱物を混ぜていることですが、それはもう資源がなく、取り合いになっていたりしているんです。」と菅原さんは真剣に語ってくれました。
菅原工芸硝子では、そのような現実から、資源の大切さを思い、今後は硝子だけでなく、社員が出すゴミなどについてもゼロを目指す方向で、新たなプロジェクトを推進していくという。
すべては循環し、つながっていることを改めて深く考えた時間となった。日々の食卓を彩る〈Sghr〉の輝きがより強く感じられるようにもなり、今後の菅原工芸硝子からも、目が離せません。
〈O0u〉では、〈Sghr Recycle〉がテーマに掲げる「作り手と使い手」「人々の暮らし」そして「地球」との「つながり」というキーワードに共感し、〈Sghr Recycle〉の製品をルミネ新宿 ルミネ2の店舗にて2022年4月28日より期間限定でお取り扱いします。ぜひお立ち寄りください。
INFORMATION
【菅原工芸硝子株式会社】
1993年、東京にて硝子食器の製造を開始した菅原工芸硝子株式会社。現在も「Sghr」ブランドの美しい硝子製品を千葉県の九十九里町にて手作りで製造し続けています。常に新しいアイディアを製品化しており、そのデザインの多くは硝子を知り尽くした職人によるもの。こだわりが感じられる曲線のデザインが魅力的です。
HP:https://www.sugahara.com
Instagram:https://www.instagram.com/sghr_sugahara/
Writing: Yukari Fujii
Photo: Ryo Kawano