PEOPLE
2021.01.28 FRI
MY SUSTAINABLE LIFE
#20
モデル・幸太 “幸せの循環”
デビューから20年以上経ったいまなお、第一線のファッションモデルとして活躍する幸太さん。ヘアサロンとカフェを併設した店舗の経営者、さらに生粋のサーファーとしての顔ももつ彼は、最近〈Inner Peace(インナーピース)〉というプロジェクトブランドを設立。「これまでサポートしてくれた様々な人、そして素晴らしい自然環境を与えてくれる地球に対する恩返し」としてスタートしたこのプロジェクトを通じて、いろんな形の“ハッピー”の輪が広がりつつあるといいます。
人に、地球に、恩返し
——幸太さんが〈インナーピース〉を立ち上げたきっかけを教えてください。
僕のこれまでのモデル人生は、改めて振り返ると、いろんな人たちの助けがあったからこそ続いているんです。その恩返しをしたいという気持ちこそが、きっかけですね。
僕のキャリアは、サーフィンをしていたところを当時の人気雑誌にスナップされて、読者モデルとして採用してもらったことからスタートしました。その後事務所に所属してプロのファッションモデルとして活動しはじめるんですが、決して“常に順風満帆”というわけではありませんでした。

厚木にある幸太さんのお店〈ビーチツリー〉にて取材。〈O0u〉のニットに、〈ナギエ〉のパンツ、〈オールバーズ 〉のスニーカーと、この日のコーデはどれもサステナブルブランド!
——そうだったんですね。
ただありがたいことに、僕が「うまく行かない」と感じていたときには、いろんな人たちがサポートしてくれました。モデルという仕事のあり方を教えてくれた先輩方、なかなか食えなかったときに助言してくれた友人、外国での活動をサポートしてくれた現地の仲間。僕に関わってくれたいろんな人の支えがあったからこそ、モデルを続けられた。で、彼らへの感謝の気持ちを“ほかの誰かをサポートする”という形で恩返ししたいと思ったんです。
——直接返すのではなく、他の人を手助けする。まさに循環ですね。
合わせて、素晴らしい自然環境を与えてくれる地球にも感謝の気持ちを還元できる活動ができないか、とも考えていたんです。僕が大好きなサーフィンは、自然へのリスペクトがないとできないこと。自分のため、仲間のため、そして未来の子供たちのためにも、環境にいいことは絶対にしたほうがいいでしょ?他人事にはしたくないので、自分にできることはやろう、と常々思っているんです。
人への恩返しと地球への恩返し。このふたつでサステナブルな社会を実現する。これが〈インナーピース〉というブランドのテーマです。

10代のころからサーフィンを愛する幸太さんにとって、海に出向くことは日常の一部。「この環境を守りたい」という思いも、ブランドを手がける力となっているという
——具体的にはどういうものを作りましたか?
第一弾として作ったのは、僕にとって一番馴染みがあり着る機会も多い、シンプルな白Tシャツ。香港を拠点に様々なファッションブランドの企画・生産を手がける〈ガーメントワークサプライ〉とのコラボレーションアイテムです。〈インナーピース〉は、必ず誰かとコラボすることにしています。僕ひとりではなにもできないですが、僕の思いに賛同してくれる仲間とともに活動すれば、輪がどんどんと広がって、いろんな幸せのループが生まれるはず。それを期待しているんです。
Tシャツは、国際的なオーガニック認証を取得したプレミアムオーガニックコットンを使い、国内縫製。サイズ感やディテールも、僕のモデルとしての経験で得た“本当に欲しい白T”を実現するために、とことんこだわりました。

〈インナーピース〉第一弾プロジェクトがこちら。見た目はシンプルな白、でも幸太さんのこだわりがたくさん詰まった究極のクラフトT、その名も“FIRST”。肌触りと風合いを両立するプレミアムオーガニックコットン製で、ミリ単位にまでこだわった作りも魅力だ
また、売り上げの一部は、西日本豪雨災害をはじめ各地で支援活動を続けるNPO法人〈ゴリラ〉への支援金として、寄付させていただきます。〈ゴリラ〉の方々は災害支援のほかに“こども食堂”活動にも力を入れているんです。未来はこどもたちにとっての方が重要ですから、少しでも支援できればいいなと思っています。
大きくないから支援が必要
——カッコいいアイテムで、環境配慮と社会のサポート。まさにサステナブルの理想ですね。
環境配慮や社会貢献は、押し付けることではなく、賛同を得ることが一番大事だと思うんです。なので“カッコいい”ということを重視しています。今回は白Tという“モノづくり”でブランドの、ひいては僕の思いを形にしましたが、今後はそれにこだわらずにイベントや活動など、様々なアクションを起こしていきたいと思っています。
見た目や機能性のよさがあってこそ。
——普段から意識しているサステナブルな行動はありますか?
ステンレスボトルはコーヒー用と水用と、2本持ち歩いています。でもサステナブルだからという理由ではなく、単純に使い勝手がいいからなんですよ。コーヒーが好きなんですが、1杯をゴクゴクと飲みたいわけじゃない。カフェやコンビニのコーヒーだと、持ち歩くにはちょっと頼りないしすぐに冷めてしまう。となると、保冷保温ができて少しずつ飲める〈ハイドロフラスク〉は、僕のコーヒーの飲み方にちょうどいい。水だって、自宅やお店で入れて持ち歩けば、いつでも飲める。
ところがその結果、もう何年もペットボトル飲料をほとんど買わなくなった、ひいてはエコに繋がっているというわけなんです。

〈ハイドロフラスク〉のボトルは「持ち運びやすくて、サイズ感もちょうどよく、なにより冷めたりぬるくなったりしない」と、実用面でとにかくお気に入り
それからこのiPhoneケースは、〈シーショアインク〉というブランドのもの。神戸のデザイナーさんが手がけているんですが、彼は障害福祉雇用支援に意欲があることから、支援施設に委託して作っているというものなんです。
これまで障害福祉雇用で作られたものを買うことって、“支援”が先行していたと思うんです。支援したいから買う、という心持ちですよね。でもこのiPhoneケースは、アイテムとして魅力的な、エッジの効いたデザイン。“カッコいい”が先行しているんです。このほうが支援の輪が広がりやすく、結果的に持続可能な社会が成り立つと思うんです。こういう仕掛けを作ったことに、すごく共感を覚えましたね。
〈シーショアインク〉でもチャリティTシャツを作ったのですが、僕がNPO法人〈ゴリラ〉を紹介して、寄付いただいたんです。ハッピーの輪を広げることができて、嬉しかったですね。

〈シーショアインク〉は、デザイナー自らが障害福祉雇用に積極的なことから、製作の一部を支援施設に業務委託。福祉製品とは思えない、アバンギャルドなデザインが魅力
——洋服についてはいかがですか?
これまでモデルとして、本当にたくさんの服を着させてもらいましたが、僕はベーシックなデザインが好きなんです。サイズ感こそ時代によって気分は変わりますが、デザインがベーシックってことは、飽きないし廃れないし、なによりいつまでもカッコいい。とくにアウターは、若いころに買っていまだに着ているモノもたくさんあります。ケアしながら大切に着ているんです。

ライダースは高校生のとき、ボアジャケットは20代前半、コートはモデルデビューしたてのころと、どれも20年以上前に買ったアウターを、今でも大切に着ている幸太さん。「いつまでも変わらずカッコいいから、似合う季節がくると着たくなるんですよね」
——大事に着ているからか、どことなく味がありますね。
自分が好きなものを大事にすることは、自身の心も豊かにしてくれるし、無駄にしない、ゴミを出さないといったことに繋がる。立派な“サステナブル”ですよね。また、最近はこうした昔から愛用する服に、サステナブルな素材で作ったアイテムを合わせるのが、気分なんです。
人の繋がりで、いい循環を生む。
——〈O0u〉というブランドはご存知でしたか?
ブランドデビューのころから「そういうブランドが始まったんだ」と興味を持っていました。が、昔からの友人であるパーソナルスタイリストの大日向久美子さんを通じて、どんな取り組みをしているか、深く知ることができました。共感できる部分が非常に多いブランドです。先日もゴミ拾い活動を一緒にさせていただきましたね。
以前のサステナブルブランドって、単にエコ素材だというだけでピンと来ないアイテムが多かったと思うんです。でも〈O0u〉はシンプルで使いやすく、着心地も断然いい。今日着たニットも本当に肌触りがよく、着ていて気持ちいいんですよ。いくら素材が環境配慮のものだとしても、洋服は着ることで心が豊かにならないと!

この日の幸太さんが着たのは、ペルー産の無染色アルパカ繊維を使った〈O0u〉のプルオーバーニット。「このふわふわな肌触りが本当に気持ちいい。着まわしやすいデザインなのもいいですよね」
——気に入ることで長く着る、ひいては環境に優しい、ということにも繋がりますよね。
まさにそうだと思います。〈インナーピース〉もゆくゆくはその点を目指したいですし、同じく機能やデザインに優れるサステナブルブランドは最近増えていますよね。そういったブランド同士がもっと手を取り合って、世の中のマインドをもっと高めることができたら最高ですよね。
——ゆくゆくは、〈インナーピース〉と〈O0u〉のコラボも?
そうですよ!なにかご一緒できたら最高ですね!
——最後に、幸太さんが〈インナーピース〉を通じて実現したいことはありますか?
いろんな人やブランドを繋げて、“幸せの循環”の輪をもっと広げていきたいですね。前にも言いましたが、自分ひとりだけでは正直なにもできない。でも誰かの“できること”は、自然環境やサポートを必要とする人たちのためになるかもしれない。その両者を繋ぐサポートをしていきたいです。
また具体的なことだと、川の環境保全もやっていきたい。ビーチクリーンをはじめ、海の環境活動はすごく盛んですが、海にそそぐ川のクリーン活動ってあまり目立たないですよね。川をきれいにすれば、海だって自然ときれいになるのでは?それも楽しみながらできるイベントとしてできたらいいな、と思っています。
Profile:
幸太
モデル・俳優・美容家。高校在学中にスカウトされて、モデルとしてのキャリアをスタート。以来CM、広告、雑誌など、幅広い媒体で活躍。2010年には香港を拠点にしながら、アジアはもちろん諸外国で活動。2015年より、愛するサーフィンの空気感をベースに、ファッションや美容、フードをひとつの空間で提供するお店〈ビーチツリー〉を運営。2021年には「サステナブル」と「コラボレーション」をテーマにしたブランド〈インナーピース〉を立ち上げ。
instagram:
インナーピース @innerpeace_brand.official
幸太 @kotawave
INFORMATION
PERU UNDYED ALPACA 3G PULLOVER *UNISEX 11,900yen(幸太さん着用アイテム)
Photo:正重智生(BOIL)
Edit&Text:八木悠太