PEOPLE
2024.5.23.THU
MY SUSTAINABLE LIFE
#37
ご縁と出会いを大切に
1989年11月29日、生年月日が一緒と素敵なご縁で結ばれた浅野ご夫妻。
浅野裕樹さんは2014年に家業である西陣の織屋「織楽浅野」に入社し西陣織の日本伝統を途絶えさせないために帯や着物のデザイン、西陣織の帯地を使ったテキスタイルアートピースの開発や海外への展開を行っている。浅野美久さんは2016年にファッションスタイリスト石川美久として独立。結婚を機に現在は2拠点生活。
二人での取材撮影は今回が初めてだった浅野ご夫妻。今回お二人について詳しく伺い、サステナブルに対する考えを紐解いていきます。
出会いが与えた心の変化
――現在どのような活動やお仕事をしていますか。
裕樹)家業である西陣織の帯屋「織楽浅野」で帯や着物のデザインと営業、西陣織の帯地を使ったテキスタイルアートピースの開発と販路開拓をおこなっています。
美久)東京ではファッションスタイリスト。京都では夫の家業である「織楽浅野」のPRや企画のサポートをしています。
――今後、活動やお仕事を通して何を伝えていきたいですか。
日本の伝統的な衣服である帯や着物を通して、織楽浅野のものづくりに触れていただくことで、陰翳(いんえい)の移ろいや侘び寂び、日本の美意識の本質を伝えていきたいです。
photo by Ryo Kawano
―― 裕樹さん・美久さんの考える「サステナブル」とは何でしょうか。
裕樹)環境保全に関する社会全体の認識の共有と、それに伴う個々の意識改革と行動改善です。
美久)その時の環境に合わせて柔軟に変化させながら、永く愛することです。
―― サステナブルを学んだことでご自身の心境の変化や、周りの変化などありましたら教えてください。
裕樹)サステナブルを意識しながら生活する中で、消費することへの責任を理解し、ただ消費するだけではなく生産の背景への興味と作り手へのリスペクトが増しました。
本当に必要なものを大切にする。ミニマルな選択を続けることで逆に生活が豊かになりました。
美久)情報や物が溢れる世の中で取捨選択が難しくて、沢山の物に囲まれているのに満たされない時期がありました。その頃に伝統を重んじ、代々受け継ぐ環境で生きる夫と出会って心境の変化がありました。
夫の実家にあるものは曽祖父から、祖父からと大切にされてきたものが多く、作家の想いや歴史を受け継ぎ繋げる。その環境をとても豊かに感じました。人との関係も物も出会いやご縁を大切に、そして選択をする時は永く愛せるかに重きをおくことで継続可能につながる良い循環社会を作れると思います。
大切に生きること
――裕樹さん・美久さんの考える「自分らしさ」とは何でしょうか。
裕樹)人との繋がり、縁を何よりも大切に生きる。
美久)シンプル、ベーシック、シックを好みます。
――「自分らしさ」を持つことでよかったと思うエピソードがありましたら教えてください。
裕樹)20代半ばの頃に出会ったスナックのママとのご縁で本当に沢山の人にお会いしました。
見渡すといまの自分の周りにいる人たちはみんなその縁から繋がっていて、美久ともその縁の中で出会いました。興味を持って向き合ってくれる人へのリスペクトを忘れずに、これからも縁の中で生きていきたいです。
美久)和装は同形状なので色や柄合わせによって個性を出しますが、私の好みは織楽浅野のモダンな帯を用いたコーディネートに生かされています。
和装だからといって、自分の好みとは違う可愛らしいカラフルな色柄は好みません。そして、和装は日本の四季や暮らしに強く紐づいていますが、現代はデジタルばかりに目が行き、見逃している美しい瞬間が多いように思います。感性を養うため、時にはデジタルを置き立ち止まり、五感を使う心がけをしています。
photo by Ryo Kawano
身近から受け継ぐ和装文化
――ご結婚をきっかけに、ご自身のライフスタイルや考え方においての変化はありましたか。
裕樹)美久と付き合い始めてからは、ちゃんといいものを選ぶようにとマインドが変わりました。いい選択をすることが最近増えてきたように感じます。
美久)今よりも 1年、3年、10年と、より先のことを考える様になりました。
――ご夫婦での活動に関して、現在取り組まれていることや、今後の展望があれば教えてください。
私も浅野と出会うまではそうでしたが、今の時代和装が身近な方は多くないと思います。しかし夏には浴衣や、京都旅行では着物をレンタルするなど、和装に興味を持ってくださっている方を多くお見かけします。
みなさんの中に、和装文化が魅力的なものとして写っている事は間違いないと思うのですが、MY着物を持ち日常で楽しむまでには至らないのが現状です。今後は私たちがきちんと着て積極的に発信することで和装の魅力をしっかりと伝え、ファンを増やしたいです。
そのために、私たちの周りから和装に触れる機会を増やしていけたらいいなと思っています。
夢は、日常の延長の感覚で纏えるモダンな着物ブランドを作ることです。
photo by Ryo Kawano
――裕樹さんにご質問です。
日本の伝統的工芸品にも指定されている西陣織ですが、近年市場が縮小していると記事を拝見いたしました。職人の後継者育成も注目されているなか、西陣織の伝統を継続するために現在行っている取り組みがございましたら教えてください。
西陣織は分業化が問題となっております。
1つの帯ができるまでに20以上の工程があり、そのひとつひとつに熟練した職人が関わっています。どこか一つでもその工程が途絶えてしまうと作ることができなくなってしまいます。そのため出向している京都染織青年団体協議会にて、「きものの仕事展」を企画しています。呉服業界における継続的な課題である、後継者不足問題。特に業界では若手と言われる私たちにとって、事業を継続していくうえで避けては通れない深刻な問題となっています。
きものに関わる様々な仕事を知っていただくことをテーマに、京都に住みたい、京都で働きたいという方や、学生の皆さまとのマッチングを目指しています。主にSNS、WEB広告、Podcastで配信していく予定です。
photo by Ryo Kawano
――古くなってしまった着物を新しいものに生まれ変わらせることはできますか。
最近、祖母の着物と帯で掛け軸を作成しました。
女性の着物姿に見立てて、周りを着物、真ん中を帯で作成しておりアップサイクルという形で着なくなった着物や帯を新しい形で残すことができます。
――美久さんにご質問です。
ファッションスタイリストとしてご活躍されているなか、スタイリングを組む際に気を付けていることがございましたら教えてください。また、ご自身の私服を選ぶ際にも気を付けていることがございましたら教えてください。
抜け感、引き算を意識しています。飾り立てず、おしゃれもしつつ、その方の魅力を引き出せた時の喜びはひとしおです。私服選びも同様基本的にシンプルです。5年10年の着用を重きをおいて選ぶようになりました。
ベーシックなアイテムほど上質な物を選び、ワードローブはほぼ無地。その分、素材やシルエットで遊んでいます。今回着用させていただいたタンクトップも、カッティング、地厚のリブ、切り替えなどシンプルでも細部にこだわりを感じます。
――本日のスタイリングのポイントを教えてください。
ロゴのアメスリタンクの縫い目、裾の部分が丸くなっていたので、同じ様な縫い目があるスカートを選び“繋がり“を意識してコーディネートをしました。
――先程、夢は日常の延長の感覚で纏えるモダンな着物ブランドを作ることと仰っていましたが、石川さんが想像しているモダンな着物ブランドについて教えてください。
普段からきらびやかな着物を着るのは難しいですが、服のような感覚で身にまとえるモダンな着物ブランドがあれば身近に感じ、日常で着る方も増えるのではないかと私の夢になってます。
photo by Ryo Kawano
私がお着物を着る際は古典的な華やかさは避け織楽浅野の帯に合わせシックに着る意識をしています。”あの着方かっこいいよね”と広がってくれたら嬉しいです。いつしか民族的な装いの枠を超え、パリジャンが和装を身に纏い颯爽とシャンセリゼ通りを歩いていたら最高にかっこいいですよね。
日常の中でできる小さな一歩
――O0uに対してどのような印象をお持ちですか。
O0uを知ったのはサステナブルと言うワードをよく聞くようになった頃で、当時は生活からエコではないことを排除して、サステナブルはストイックであるべきと言う難しい課題に感じていました。
そんな中でO0uは100%なことより生活の中でサステナブルに寄り添った選択をする事が、私たちのできる事なんだよと発信をされているように感じ、私は視野を広げて頂きました。
――O0uと共感する部分があればどんなところか教えてください。
「日常の中の、自分らしさを大切にする」の部分に共感します。
――「環境・社会問題、サステナブルな取り組みについて、興味はあるけどなんだか今一歩踏み出せない…」という読者に対して、メッセージをお願いします。
サステナブルって、自分や周りや地球がちょっとハッピーになる事の積み重なりだと思うんです。
生活を無理に変えたりせず、朝起きてから寝るまでの生活で、もっと身近にできる選択をしたらいいと思います。
――O0uの新しいラインである“relief O0u”というロゴシリーズの感想を教えてください。
ロゴがワンポイントになっていてかわいいです。ロゴのメッセージ性を理解して着られたらいいなと思います。
そこから話のネタになってサステナブルな話をするなど、一人でも多くの人がサステナブルへの意識をしていけたら嬉しいです。
PROFILE:
浅野裕樹(あさのひろき)
株式会社織楽浅野 専務取締役
1989年生まれ、京都市出身。京都芸術デザイン専門学校でグラフィックデザインを専攻。2012年から図案家・佐藤秀和に師事。2014年に家業である西陣の織屋「織楽浅野」に入社。帯や着物のデザイン、西陣織の帯地を使ったテキスタイルアートピースの開発と海外への展開をおこなう。
インスタグラム:https://www.instagram.com/shokurakuasano
浅野美久 (あさのみく)
2016年ファッションスタイリスト石川美久として独立。主に女性誌や女優・タレントのスタイリングを担当。
現在は結婚を機に京都との二拠点生活を開始。夫の家業である「織楽浅野」のPRや企画のサポートも担う。Instagramでは二拠点生活を軸に、美しいもの豊かに感じる瞬間を発信。
インスタグラム:https://www.instagram.com/miku___ishikawa
https://www.instagram.com/stylistmikuishikawa(stylist work)
INFORMATION
浅野ご夫妻も出演している“relief O0u”特設ページ公開中:https://o0u.com/collections/reliefo0u-1st