PEOPLE
2021.11.26 FRI
MY SUSTAINABLE LIFE
#16
栗山遥"心地いい自然に寄り添って"
SNSを通じてその等身大で自然なライフスタイルが注目されている栗山遥さん。無理と無駄のない、オーガニックな彼女の暮らしは見ているこちらをも優しい気持ちにさせてくれます。ヨガインストラクターとして身体のケアだけでなくヘルシーなマインドセットを伝え、自身のサステナブルブランド〈seed and soil〉ではエシカルな消費を提案。どんなきっかけで自然に寄り添うライフスタイルが生まれたのでしょうか。彼女が住む海沿いの町へ出向き、お話を聞きました。
バランスを、いつも心に
——6月に海沿いに引っ越されたそうですが、現在のライフスタイルを教えてください。
こっちに引っ越してきてからはほとんど家で仕事していて、都内へ行くのは月に2、3回程度。今はヨガを教えたり、記事を書いたり、好きなブランドのPRをお手伝いしたりしています。早朝か夕方、海に出かけてサーフィンをして、海の見える丘でヨガをすることも。
——海が近くにある生活、素敵ですね。
海もそうですが自然が近くにあるといろんなバランスがとりやすくて。今は以前よりもさらに、やりたいことをいいリズムでできている感覚です。
——遥さんのリズムってなんだか心地いいですよね。例えば、ラインがなかなか既読にならない。いい意味で(笑)。自分のペースをしっかりキープしているように感じます。
はは、なんだかすみません(笑)。でも好きなことを仕事にしてるからこそ、詰め込みすぎて苦しくなってしまうのは嫌だっていう気持ちがあって。仕事をする時間も大事だけど同じくらい自由な時間を大切にしたい。がんばることと、がんばらないことのバランスを自分で整えることはいつも意識しています。
特に日本人は仕事や育児で常に疲れていたり、身体の不調を感じても休息しなかったり、ついがんばり過ぎてしまうことが多いように感じるんです。だからヨガのクラスでも『休む練習』をしてもらうようにしています。
——具体的にヨガで教えているのはどんなことですか?
エネルギッシュなヨガより、ゆったりと心地いい陰ヨガを主に扱っています。内側の感覚や今この瞬間に意識を向けるマインドフルネスの考えも。生徒さんには周りとの差をはかるのではなく、自分の中心と繋がることを伝えるようにしています。綺麗なポーズをとることよりも自分の心地いいところを大切にする。これはマットの外に出た時にも活かせることだと思っています。
受け継がれる、サステナブルな生き方
——サステナビリティについて考えたり、行動したりするようになったきっかけは?
21歳くらい、大学生のときにサーフィンをはじめたのがきっかけでした。それまで海に来る機会はあまりなかったんですが、自然が近くなったことで外からだけでは見えなかったゴミの多さや環境問題を肌で感じるようになりました。
授業やニュースで見聞きしていたことが、「あ、これは現実で起きていることなんだ」って。それまでは身近に感じられなかったから現実味がなかったんでしょうね。でもそうやって実感してからは、漠然とした危機感に襲われて。そこから本を読んだり、調べたりして学んでいきました。
——それが今のナチュラルな生活につながってるんですね。
ひとつの大きなきっかけでした。でも元々、福島に住んでいる祖父母がすごく自然な暮らしをしていて。自分たちで無農薬野菜を育てたり、家で取れた果物はジャムにしたり、梅干しや漬物を作ったり、柿を干したり。そういう中で育っていたので、オーガニックとか自然との暮らしとか、そういったものは自分の中にベースとして染みついていたように感じます。
——おじいさま、おばあさまから学ぶことがたくさんありそうですね。
これまではふたりから自然に寄り添った暮らしを無意識に学んでいたと思うんですが、環境問題に興味を持ったからこそ吸収できることもたくさんあります。いい土の作り方だったり、野菜の育て方だったり。最近コンポストを始めたんですが、落ち葉を入れるといいとか、米ぬかを入れると分解が進む、なんてことは最近祖父母に教わりました。
——コンポスト、すごく興味あります!
とっても簡単なので本当におすすめですよ!生ゴミを入れて、黒土をかぶせるだけ。私、家事の中で生ゴミの処理が一番嫌いだったから(笑)。一石二鳥って感じでした。
——とても小さなことに感じますが、その小さなことをたくさんの人が行えば、結果的に大きな変化をもたらしますよね。
そうなんです。環境問題って調べれば調べるほどその規模が大きすぎて、自分のやってることが無意味に感じてくるんですよね。ときどき、エコ不安症(*)みたいに感じることもあるんですが、すべてがマイナスな方向に向かってるわけじゃない。良くなっていることに目を向けようと努力しています。
例えば、徐々に大きな企業が意識を変えてきていますよね。環境問題のアプローチの仕方が他の企業との競争を生む。それってとてもいい流れだと思うんです。企業が取り組むことで一般の人にもどんどん広がっていく。希望はあるんです。
私は今、まだ個人レベルでしか行動できないのですが、小さなアクションひとつひとつに意味があると思っています。何年か後に、きっといいことに繋がると信じています。
*地球の危機的な環境問題に対して起こる、慢性的な恐怖心や不安感、無力感など。環境問題が深刻化してから世界で広まりつつある不安障害のひとつ
意識的な消費がモットー
——今日は〈O0u〉のニットコートを着ていただきましたが、いかがですか?
ふわふわしていて肌触りがすごくいいです! 今日は暖かいのでキャミソールに合わせましたが、素肌に羽織ってもブランケットみたいな気持ち良さですね。
——とってもお似合いです。ナチュラルなコーディネートも遥さんの魅力のひとつだと思いますが、洋服へのこだわりは何かありますか?
洋服は古着が多いです。新しい服を買う時には、長く使えるかどうかというのが選ぶ基準になってます。5年10年着られる素材やデザインか。持っている服に合わせられるか。肌に触れるものだったらオーガニックコットンや自然由来のアイテムを選ぶことが多いですね。
——何かを購入する時、遥さんのように商品の背景を大切にしたり、先を見据えて選んだりすることは、とても重要だと思います。
服に関わらず、あらゆる製品に「作る・送る・捨てる」というの一連の流れがあります。それだけで大きなエネルギー負担があるので、何かを消費する時には特に気を遣っています。洋服も毎シーズン作られて、たくさん捨てられて、それって悲しいことですよね。“流行”って怖いと思うんです。そういう無駄を、まず消費者である自分から生まないようにしたいと思っています。
——最近、ご自身もサステナブルブランドをスタートされました。
今年の10月に〈seed and soil〉というブランドをローンチしました。これまで環境問題へのアプローチとして、先ほどお伝えしたような意識的な消費やSNSで発信することでアクションしていましたが、同時に生産背景がしっかり見えるエシカルなアイテムを作ることも夢だったんです。
みつろうラップやエコバッグなどの製品は、農場と縫製工場の特定ができる、トレーサビリティに優れたオーガニックコットンを使用しています。みつろうもすべて手作業で作られている安心安全なものを選びました。
——遥さんらしいブランドです。名前の由来を教えてください。
わたしたちの行動や選択、ひとつひとつが種となり、大地に根を張るように広がっていきますように、という願いを込めて付けました。
——ブランドとして特にこだわっている部分を教えてください。
ホームページにはすべての商品がオーガニックであるという証明書も掲載し、安心安全だということを伝えています。原材料は何か、どこから来ていて、誰がどんな想いで作っているのか。商品が生まれるところから梱包まで、その背景とストーリーがすべて美しいものであるようにしたいんです。
やや矛盾していますが、購入によって環境や社会に貢献できる商品を買い、そうでない商品は買わないで欲しい、意識的な消費をして欲しい、という趣旨のメッセージを載せています。消費主義がすべてでははなく、消費という選択をもっともっとマインドフルに考えるきっかけになってほしいなと、考えています。100%納得したうえで、本当に必要なら購入していただきたいんです。それくらい、消費者の方には新しく物を購入するときには意識を向けてほしいと思っています。
——そういった消費者へのアプローチの仕方は新鮮ですね。
今の大量消費社会に待ったをかけるためにも、意識的に消費してほしいという思いがあります。メッセージを込めた製品を出すことでこの考えを知ってほしいと思いました。もっと多くの方が「エシカルな消費」を心がけていただければ嬉しいです。
——いろいろなお話をお聞かせいただきありがとうございました。情熱的にどんどん言葉が出てくるので、刺激的でした。
こちらこそありがとうございました。コロナ禍で気づいたことがたくさんあって。やりたいことをやる、会いたい人には会う、言いたいことは言う。今って今しかないので、大事にしていきたいと思っています。
Profile:
栗山 遥
1996年生まれ。ヨガインストラクターを務める傍ら、2021年にサステナブルブランド〈seed and soil〉を立ち上げる。海沿いの心地いい暮らしやサステナビリティ、オーガニックコスメなどを自身のインスタグラムで発信。そのナチュラルでヘルシーなスタイルへのファンは多く、フォロワーは9万人を超える。