INSPIRATIONS
2023.5.31.WED
ECO FRIENDLY PIONEERS
#24
美しい物流をつくる
「美しい物流をつくる」をミッションに、これまでの物流の概念を再定義し、EC社会にフィットした新しい物流サービスの開発に取り組んでいる〈comvey(コンベイ)〉。
今回は、comveyの代表取締役である梶田さんに、企業活動を通じて伝えていきたい“想い”を伺いました。
暮らしの中のSDGs
―SDGsやサステナブルに関心を持ったきっかけは何ですか。
もともと社会課題を解決する事業をつくりたいという想いがありSDGsには強い関心を持っていましたが、「ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法 / Pawl Hawken 著、山と溪谷社」という本に出会い、その想いは一層強くなりました。この本では、世界中の気候変動への取り組み事例が紹介されているのですが、それらを知った上で、自分がこれまで携わってきた物流分野ではどんなことができるだろうか、と考え始めたことが今のcomveyにつながっています。
ー普段の生活の中でのSDGsな取り組みがあれば教えてください。
やってみて気持ち良いと感じたことを無理のない範囲内で楽しみながら取り組む、というスタンスを大切にしています。例えば、カフェでコーヒーを飲む時は必ずマグカップやグラスで飲むなど、日常生活ではなるべくゴミを出さないように意識しています。ゴミを最小限に抑えることは、私の中では気持ちよく、かつ楽しみながらできることです。また、周りの人がやっていて素敵だなと思ったことも、とりあえず試してみるようにしています。
人と人の心を繋ぐ付加価値のある物流
ーcomveyの成り立ちを教えてください。
もともと私は、商社で物流事業に携わってきました。現場から新規事業の企画まで幅広い業務に関わる機会がありましたが、その中でも現在のEC物流や宅配便の抱えている問題は非常に深刻であると感じました。今も急速に拡大を続けるECは、便利になった一方で多くの問題が生じています。大量の梱包ゴミ、深刻な配達員不足、EC事業者の返品対応コストの増大など、このままでは人にも地球にも多大な負担が掛かり、いずれ限界を迎えます。そこでcomveyを立ち上げ、今後のEC社会に求められる物流の仕組みを自分たちなりに考え、社会に実装していこうと考えました。
―コンセプト、企業理念、現在の企業活動内容は何ですか。
comveyのミッションは、「美しい物流をつくる」です。ここでいう「美しい」とは、見た目の美しさというよりも、人と人の想いが通じ合っている状態を意味しています。これは私自身の、どれだけ機械化・省人化が進んだ世の中になっても人間どうしの想いが通じ合う社会をつくりたい、という気持ちが出発点となっています。
物流には「ものを運ぶ機能」だけではなく「人と人の心を繋ぐ付加価値」があると信じています。今のEC業界は、売り手・買い手・運び手の3者で成り立っていますが、物流によってお互いの心が通じ合い、より協力していくことができれば、サステナブルな未来は実現できると考えています。
ミッションを達成するために私たちcomveyがやっていくべきことは、これまで当たり前とされてきた物流の概念を再定義し、様々なステークホルダー(利害関係者)と力を合わせながら、これからのEC社会にフィットした"新しい物流の仕組み" を創造していくことです。その第一歩として、現在はシェアバッグ事業に取り組んでいます。
梱包材のリユースが当たり前になるように
-シェアバッグの仕組み、利点を教えてください。
シェアバッグは、使い捨てずにシェアするエコな梱包バッグです。comveyのシステムが導入されたオンラインストアを訪れたお客様は、商品購入時にダンボールなど従来の梱包材の代わりにcomveyのシェアバッグを選ぶことで、クーポンなどの特典を獲得できるだけでなく、気軽にSDGsに貢献することができます。
シェアバッグを選択し商品が届いたら、バッグの二次元コードを読み取ります。二次元コードを読み取ったバッグをポストに投函し、バッグの返却が確認できたら、お客様は次回購入時に利用できるクーポンを獲得できます。そして、comveyへ返却されたバッグはクリーニング・修繕が施されたのち、再びEC事業者様へと提供されます。
ーどうしてシェアバッグにしようと思ったのですか?
ある時、家に溜まったダンボールを出すために玄関を開けると、私の家のだけでなく、各家の前に同じように大量のダンボールの山があり、それらをトラックで回収している光景を目にしたんです。これが日本全国で日常的に起きていると想像した時に、違和感を覚えました。一度商品を配送するために新しい梱包材を使い、それを廃棄して毎度回収し新しく作るというのは、果たしてベストな方法なのだろうかと思いました。また同時に、一般消費者もEC購入時の梱包に対して多くのストレスや不満を持っているということも分かっていたので、梱包材をリユースすることで、環境負荷の軽減や梱包ストレスの削減に寄与できないかと考えました。
ーシェアバッグ素材や生産においての特長は何ですか?
実はバッグをデザインする上で考慮したポイントはたくさんあり、この場だけでは語りきれないのですが、やはり生地についてですね。数十回以上のリユースを前提にしているので、高い耐久性・防水性を持ちながら軽量であること、リサイクル可能であること、そして年齢・性別問わず親しんで頂けるように色や手触りにも配慮しています。
一方、機能面では、折り畳んで全国のポストに投函(切手不要)できること、宅配便の各サイズに対応していること、開封が簡単であること、輸送中のセキュリティを確保できることなどを可能にする設計となっています。
また、生産においては、国内で製造された生地を使って国内の縫製工場で一つ一つ丁寧に作っている点もポイントの一つです。
ー 国内生産の良さについてお聞かせください。
国内生産にこだわるのは、「その製品がいつどこで誰によって作られたのか」を明らかにするトレーサビリティの観点や、各工程における環境負荷を定量的に把握するライフサイクルアセスメントの観点から、可能な限り自分たちの手の届く範囲内で責任を持ってバッグを作りたいという想いがあるからです。バッグのリユースによってEC配送時の脱炭素化を推進するcomveyであるからこそ、その生産工程においても透明性の高いものづくりに取り組んでいきたいと考えています。
ー将来的に取り組みたいSDGS活動や今後の新しい取り組みがあれば教えてください。
寿命を迎えたバッグは、生産時に出た余り生地と共に、パートナー企業の協力のもと再生ペレットに生まれ変わり、原材料として再利用される仕組みを構築しています。
それとは別に、バッグの生地やパーツをアップサイクルし、comveyのオリジナル商品として販売していくという構想もあります。
日本ではまだ、梱包材をリユースするという概念はほとんど定着していませんが、5年後10年後には当たり前の文化になるよう、少しずつ、着実に、自分たちができることに取り組んでいきたいと考えています。
ー「環境・社会問題、サステナブルな取り組みについて、興味はあるけどなんだか今一歩踏み出せない…」という読者に対して、メッセージをお願いします。
私たちの日常生活は、小さな選択の連続だと考えています。コンビニで買い物をする時にレジ袋をもらうかもらわないか、カフェでドリンクを飲む時にプラスチックのストローを使うか使わないか、など、あまり意識せずともこのような選択を行なっています。自分一人くらいの行動では何も変わらないのではと思うこともあるかもしれません。しかし私は、この小さな選択を積み重ねていくことや、一人でも多くの人が参加することによって、社会は少しずつ変わっていくと信じています。
自分自身が楽しみながら取り組めるかどうかがとても大切だと思います。楽しめないと続かないからです。comveyのシェアバッグにおいても、ご利用頂くお客様には「二次元コードを読み取る」・「バッグを折り畳む」・「ポストに返却する」など従来の梱包材にはなかった、一見すると面倒にも思えるアクションも楽しんで頂きたいと思っています。そして、私たちcomveyも、「O0u」に関わる皆様と共に、“楽しみながら”、美しい物流をつくり、社会に貢献していきたいと考えております。