INSPIRATIONS
2021.08.06 FRI
ECO-FRIENDLY PIONEERS
#07
日本初のゼロウェイスト・スーパー
ヨーロッパの先進国ではここ5年で、“ゼロウェイスト・マーケット“や“バルクショップ”と呼ばれる形態のマーケットが増えています。簡単に言うと“ゴミの出ないお店”。食材を可能な限り個包装せず量り売りすることで、ゴミの大幅な削減を実現しています。ゼロウェイスト・スーパーの日本におけるパイオニアが、今回ピックアップする〈斗々屋〉です。日本でいち早く取り組んだきっかけを、PRのノイハウス萌菜さんに聞きます。
古くからの販売方式で“脱・個包装”を徹底
2017年の統計によると日本の生活ゴミは、年間4289万トン。その中でもっとも多いのが、プラスティック容器やレジ袋、包み紙といった容器包装ゴミ。その割合は、約62%を占めます。それらのゴミのほとんどが、微生物に分解されず海洋生物や生態系へ悪影響を与えていると言われています。我々はここ十数年の間で「個包装されていて当然」という意識が当たり前となってしまっています。その意識に疑問を持ったチームが始めたのが、それまでは卸事業に取り組んでいた〈斗々屋〉。新たに小売事業に地挑戦することになったのです。
「〈斗々屋〉の代表を務める梅田温子は、15年に渡り海外からオーガニックの食材やワインなどを輸入することを生業としています。料理人でもあり、バラエティ豊かでクオリティにもこだわった自然農法の食材を輸入する中で、ある時自らが個包装してゴミを増やしているという矛盾に気付きました。その矛盾を解消するためにたどり着いた答えが、“ゼロウェイスト”な納品と販売でした。はじめは卸事業からスタートし、また合わせて数年前から練っていた小売事業プランを実現する最初のステップとしてお店を開いたのです。それが2019年にオープンした nue by Totoyaだったのです。」
最初は梅田さん1人でのスタートでしたが、SNSなどを通じて同じ志を持つ仲間に恵まれ、現在ではノイハウスさんを含めた7人のメンバーで、ゼロウェイストを広める活動を進めているといいます。
「私は海外で育ったのですが、日本に来てからゴミが出ない買い物の選択肢の少なさを体験し、個包装に対する意識が大きく変わりました。ゼロウェイストの鍵となるのは、昔ながらの量り売り。その販売方式をヒントにして、2019年から代々木公園近くで日曜日だけ営業するモデルショップを始めました」
現在は店舗を国分寺に移し、カフェスロー内にて営業。『nue by Totoya』では、穀物やナッツ、味噌や醤油、オリーブオイルなどの調味料、梅干しや手作りクッキーにいたるまで、すべてがグラム単価で値付けした“量り売り“。もちろん家庭ゴミとなってしまう個包装はされていないので、持ち帰るには容器が必要です。
「容器はビンやタッパーといった、繰り返し使えるものをお客様ご自身にご用意いただいています。万が一持参できなかったり、追加で容器が必要な場合は、オーガニックコットンの巾着やガラスやステンレスの容器の販売も行っていますし、お客さまから提供いただいた空き瓶なども無料で用意しています」
必要なものを必要な分だけ。それもゴミとなる使い捨て包装や容器は一切出さない。セルフ方式で提供されるこの販売方式だが、始めは慣れないことが多く、試行錯誤の連続。特に大きな課題だったのが、お会計だといいます。
現代のライフスタイルに合った“量り売り”の仕組み
「半世紀の前の日本で主流だった売り方ですが、セルフレジや電子決済が普及した今となっては比較すると効率が悪く、不便な面もありました。そんな課題に悩んでいる時に、寺岡精工という会社の会長が足を運んでくださり、たくさんのヒントをくださったのです」
昔ながらの対面販売は、店主がお客さんの注文を受けてから商品を取り分け。しかしこのやり取りを現代で行なってしまうと、どうしても時間がかかり過ぎてしまいます。そこで「手助けしてくれた」というのが寺岡精工という会社。流通小売のスペシャリストだ。
「“e.Sense”とい500円硬貨サイズの最新モーションセンサーを開発した会社でもあります。このセンサーをセルフサービスの什器につけることで、お客さんがその商品を取り出すとセンサーが反応し、商品情報を最寄りの電子秤に送信できるんです。お客さまがセルフサービスで容器に入れた商品を電子画面から選択するときの選び間違いのリスクが減ります。また、容器の重さを登録できるRFIDラベルを活用することで、容器の重量を毎回測る必要がなくなり、お会計もよりスムースに。ストレスなくお買い物を楽しんでいただけるようになりました」
そんなヨーロッパ各地の量り売り店でも導入されているという最新システムなどを導入した店舗が、先日7月31日京都にオープン。それが日本で初となるゼロウェイスト・スーパー、斗々屋京都本店です。
日替わりメニューのレストランでフードロス問題にも貢献
あくまでも普段使いできるスーパーを目指して、生鮮食品を含めた商品ラインナップや価格帯などをしっかりと考慮して店づくりをしてきたという、斗々屋京都本店。こちらも、ゼロウェイストの要となる容器はお客さん自身が持参する量り売り方式。また先述の寺岡精工のシステムを活用した会計方式を取り入れているといいます。
「生産者や業者から納品してもらう際もできる限りダンボールなどを含んだ使い捨ての素材を使わないように、ご協力をお願いしています。木箱で納品してくれる会社もあるんです。斗々屋での買い物には、納品から販売まで、ゴミが発生しない。そんな取り組みに力を入れています」
また店舗にはレストランも併設。それによってフードロス削減にも大きく貢献できるといいます。
「まだコロナの影響もあり営業時間は必要に応じて変更する可能性もありますが、レストランは18時〜23時の営業を予定しています。メニューは決まっておらず、その日にスーパーに残ってしまった食材をうまく調理したメニューを提供します。毎日メニューが変わるので、シェフは大変ですが、お客様にはご好評頂けるかと(笑)。代表が厳選したオーガニックワインも、もちろんご用意しますよ」
もうひとつ注目したいのが、このゼロウェイストのノウハウを他社にも共有していることです。
「ゼロウェイストは我々だけが取り組んでも意味はなく、きちんとライフスタイルの一環として日本に根付かせることを目指しています。利益や紹介料などは取らず、他の量り売り店と生産者とのコネクションも構築したいと考えています。生産者の方々とは直接関わっていますし、そのこだわりには自信を持っていると自負しております。また継続的によりよい方向に進むためには、ローカルにとどめるのではなく、グローバル化することも大事だと思います。オーガニックやフェアトレードなどの海外でしか手に入らない質の高いものも引き続き積極的に紹介していきたいと思っています」
ゼロウェイストなお買い物ができる場所が日本中にできることが目的であり、最終的なゴール。そんな斗々屋のサステナブルな取り組みは、まだまだ始まったばかりです。
nue by Totoya国分寺店
東京都国分寺市東元町2-20-10 (Café Slow内)
営業時間/平日11:30-17:00、土日祝11:00-18:00
定休日/月曜、毎月18日
instagram/@nue.by.totoya
斗々屋京都店
京都府京都市上京区河原町通丸太町上る出水町252番地 大澤事務所ビル1F
営業時間/マーケット10:00 - 19:00、カフェ10:00 - 16:00、レストラン18:00 - 23:00
定休日/水曜日
instagram/@totoya_kyoto