INSPIRATIONS
2021.08.27 FRI
ECO-FRIENDLY PIONEERS
#10
いのちのてざわり、未来への“輪”
クルックフィールズは、千葉県木更津市にある…最も簡単な言い方だと、農場です。しかしただの農場ではなく、サステナビリティ、食のあり方、自然と人間の関係といった、未来に向けた“循環”をテーマにいろいろと試行錯誤する複合施設。持続可能な未来の生き方や、いのちのてざわりを体験するにはもってこい。実際にどんなことを行なっているのかを見ていきましょう。

写真提供:クルックフィールズ
豊かな自然との共生を目指して
地球環境や我々の地域社会の未来のために、サステナブルなことを心がけることは重要です。このメディアを運営するブランドO0uも、洋服の素材調達や生産の過程において、環境に配慮した取り組みを行なっています。ただ、実際に使われる素材を現地に行って、自分の目で確かめることは難しい。一方でここ、クルックフィールズを取り巻く環境は、実際に目で見て、肌に触れて、“循環”や“持続可能”といった仕組みを体験することができます。

農場や手つかずの自然が残る緑豊かな場所に、アート作品やソーラーパネルが並ぶ。整えられた環境は、未来のあるべき姿かもしれない
「ここは元々、牧場だったそうなのですが、私たちがこの土地に出会った15年前は、手つかずの期間が長く非常に荒れた土地でした。それを文字どおり開墾し土作りからはじめ、2019年に30ヘクタール、東京ドーム6個分にもなるサステナブルファーム&パークとして、みなさんに楽しんでもらえる施設を作りあげました」
そう話してくれたのは、広報を担当するマネージャーの飯田あずささん。
「ここを手がけるのは、音楽家の小林武史です。彼は2001年の同時多発テロをきっかけに“循環”や“地球環境”を考えるようになり、自然エネルギーや環境保全活動をしているプロジェクトに対して融資や支援を行うap bankを立ち上げました。ご存知の方も多いap bank fes.もその一環です」
そんな経緯で2005年から開催されたap bank fesこそが、農場をてがけるきっかけを作ることとなる。フェスへのフード出店をきっかけに「kurkku(クルック)」として都内にレストランを展開するようになり、次第に食の安全やフードロスにも目を向けるようになったという。

クルックフィールズの全体図。30ヘクタールのなかに、「ファーム」「イート」「アート」「プレイ」「ステイ」「ネイチャー」「エナジー」の7カテゴリで“循環”を学べる
「じゃあ自分たちで農業にチェレンジしてみようじゃないか、と農業生産法人“耕す”を立ち上げたのが2010年のこと。こうして、都市との繋がりも近いこの木更津にたどり着いたのです」

30ヘクタールのうちの大半を占めるのが、作物を育てる農業エリア。夏真っ盛りの取材時には、オクラが大豊作だった
見て、触れて、“サステナブル”を体感
すり鉢状の広大な土地に作られたクルックフィールズ。緑が広がる美しい風景に心打たれるが、この自然の中にも“循環のしくみ”がきちんと設けられています。その象徴が、水。

植物や微生物の力を借りて、水のろ過を行う“バイオジオフィルター”。水辺で暮らすメダカやトンボなどさまざまな生き物にも出会える
施設内で使われる水には地下水を使用。一方で排水は、地下に設置した浄化槽を通ったのちに、微生物や植物など自然の力を使う“バイオジオフィルター”と呼ばれる小川に流れ、最終的には“マザーポンド”と呼ばれる施設中央にある池にたどり着きます。どちらも多様な動植物が暮らし、多様な生態系を作る、純然たる“自然環境”。また池の水はポンプで組み上げて各施設で使われ、再び浄化槽から小川、池へと巡らすことで、水辺の生態系をより豊かにし、美しい循環の輪を作り上げています。

すり鉢の底にあたる“マザーポンド”は、KURKKU FIELDS全体の調整池。場内に降り注ぐ雨水から各施設からでる排水まで全てが一旦この池に集まり、太陽光パネルを活用し、一部を汲水し、小川に流しビオトープに利用している。
また施設内でひときわ目を引くのが、メガソーラー。2箇所に集められたソーラーパネルは現在なんと2メガワットを発電。一部はテスラの蓄電池を活用し、晴天時は場内施設すべての電力をまかなっているとのこと。環境に負荷をかけないサイクルを、根底から支えているのです。
メガソーラーをはじめたのは2012年。当時は作られた電気は全て売電していたが、いまではマイクログリット化が完了し、太陽光パネルから発電される電力をそのまま場内で活用しながら余剰分をテスラのバッテリーに蓄え、夜間や早朝など太陽光による発電量が低い時に活用する。晴天時はほぼ100%、年間を通じてに8割の電力をまかなう
この施設のベースである“ファーム”に目を向けてみましょう。「この土地を次世代も使い続けられる農地へ」という考えのもと、有機農業を実践し、大地に負荷をかけない方法で作物を育てています。また水牛や山羊、羊を飼育する環境も、彼らに極力負荷をかけない方法を取り入れ、餌には近隣地域の未利用資源を活用。


上:農場では季節によってさまざまな作物を育てる。場内で売られるパンやピザに使われる小麦も一部ながら場内で栽培にも挑戦している 下:水牛のミルクからは上質なモッツァレラチーズが作られる。都内のレストランにも使われる人気商品
さらには場内で出るゴミは堆肥として活用。植物ゴミや落ち葉、雑草、さらには家畜の排泄物や生ゴミにいたるまで。すべてを上質な肥料として生まれ変わらせて、畑に活用しているのです。

有機ゴミをすべて集めて、肥料にする堆肥場の様子。自然の力を活用するためか、匂いはまったく気にならない
これらすべての美しい“循環”を、目で見て、触れて、体験できる。“サステナブル”を実感するには、最高の仕組みが整っているのです。

場内の循環の様子を解説する看板。自然の恵みをフル活用した、まさに“サステナブル”な仕組み
ただ学ぶのではなく、楽しく体験
こうした“サステナブル”な仕組みをただ見てまわるだけでは、感動を覚えないのも正直なところ。しかしクルックフィールズには、楽しみながら体験できる仕掛けも豊富です。
例えば「食」。農場で取れた野菜、ハーブ、動物たちのミルクなどは、レストランやベーカリーなどのお店で味わうことができます。近隣地域で害獣として駆除されたイノシシやシカなどもソーセージなどに加工して販売。いのちの恵、循環を、味覚として体験できます。


食材は、ほとんどが場内または近隣地域で採れたものを活用。また建物も古材を利用し、設備も環境に配慮している
緑あふれる空間の中には、廃材を利用した遊具やステージを揃え、また現代アートも多く展示しているところも特徴です。子ども楽しめて、大人も心の滋養をつけられる。そんな素敵な休日を過ごせる施設なのです。

上:シーソーやブランコなど、廃材を使った遊具も点在
下:草間彌生さんの作品をはじめ、現代アート作品も見られる。草間彌生「無限の鏡の間-心の中の幻/Infinity Mirrored Room -Illusioninsidethe Heart」ミクスト・メディア(2018)
また “タイニーハウス”という、古材やアンティークを再利用した移動もできる木製の小屋が6棟あり、宿泊も可能。バーベキュー場にシャワー施設も完備されていて、さながらグランピングのような、贅沢かつひと味違った一夜を過ごすことができます。とくに朝方、場内のいのちが輝くような瞬間は、日帰りでは決して見られない光景。


タイニーハウスでは限りある資源を無駄なく使うべく、古材を活用。シンプルな作りの中でも快適な一夜を過ごせる
様々なツアーや農業体験会も用意するクルックフィールズ 。ここは、これからの時代のために、なにができるかを知れる場所。持続可能な生産と消費、食物及び食品ロスの削減、廃棄物の再利用、自然エネルギーの活用などなど、言葉にするとちょっと難しい“サステナブル”を、柔らかく伝えてくれる。そんな素敵な施設でした。

INFORMATION
クルックフィールズ
千葉県木更津市矢那250303-5701-9349
営業時間10:00-17:00(施設店舗により異なる)
定休:祝日以外の火曜、水曜
instagram/@kurkkufields
Photo:正重智生(BOIL)
Edit & Text:八木悠太