PEOPLE
2021.06.04 FRI
MY SUSTAINABLE LIFE
#06
写真家・Ippei&Janine “越境”
写真家やジュエリーデザイナーなど多彩な顔を持つIppei & Janine(イッペイ & ジャニーヌ)夫妻。それぞれ東京生まれ、メルボルン生まれというおふたりは、7歳の娘さんと出かけるアウトドアを通して、環境問題を強く意識するようになったそう。創意工夫で楽しみながら、環境に配慮した生活を送るコツとは? そして、日本ではまだ馴染みのない、夫妻でクリエイティブユニットという働き方とは? お話を伺いました。
自分のボスは自分。本当にいいと思えるものを手掛けたい
ーーO0uの撮影でのおふたりが、とてもナチュラルで素敵でした。ご夫妻でクリエイティブユニットとしてとして幅広く活躍されていらっしゃいますが、どのようなきっかけで一緒にお仕事するようになったのですか?
僕は以前、ヨーロッパ各地で10年ほど過ごしていましたが、その中で一番長く暮らしたオランダのアムステルダムで妻のジャニーヌに出逢いました。
当時、妻は広告代理店でアートディレクションやグラフィックデザインを手掛けていて、自分はウェブデザインの会社で働きながらフリーで写真を撮っていました。帰国してしばらくは、僕はフォトグラファー、妻はアートディレクターとしてお互い別の企業に勤めていたんですが、ふたりとも続かなかったんですよ(笑)。会社での働き方が合わなくて、すぐに独立してしまったんです。ふたりが共通して持っていたのは、自分たちの価値観や世界観と合わない仕事をしたくないという想いでした。自分のボスは自分でいたいし、自分たちが本当にいいと思えるものを手掛けたいという部分が一致して、それからはふたりで一緒に仕事をするようになりましたね。
ーー夫妻で一緒に働くという選択肢は、日本人だと馴染みが薄いように思うのですが、もともとご自身の中にあったのでしょうか?
日本では珍しいと言われますが、欧米だと割と一般的なんですよね。夫妻で建築ユニットをやってる人や、アパレルブランドを夫婦で経営している人が当たり前にいる。僕の両親も、ジャニーヌの両親も夫妻一緒に仕事をしていたので、僕らにとってはすごく自然なことでした。
ーーお二人にとっては、ごく当たり前の選択肢だったのですね。夫妻で働くことのメリットとはなんでしょうか?
一番は、お互いに客観的な目線で意見交換できることですね。たとえば写真の仕事に関して言うと、自分で『すごくいいものが撮れた!』と思っても、他の人が見ると大したことないってことが結構あるんですよ(笑)。作っているほうはストーリーを分かっているぶん思い入れがあるけど、背景を知らない人には物語が伝わらないことってたくさんありますよね。だから客観的な目線ってすごく大切。
ジュエリーに関しても、細部にこだわりすぎて全体の雰囲気が固くなっていないかなど、お互い意見できるのは大きなメリットだと思っています。クリエイティブな仕事全般に関して言えることですが、自分が信頼できる人からの率直な意見があると改良点が見えやすいので、プロセスも速くなりますね。
ーーお互いの価値観を分かっていて距離が近いからこそ、スムーズな意見交換が可能なんですね。
仕事だけでなく家事や育児の分担がしやすいことも、夫妻一緒に働く上での大きなメリットですね。いつも撮影が終わって帰宅すると、ふたりで写真の選定と現像を行うんですが、選定は妻で僕が現像という役割分担です。妻が写真を選んでいる間に、僕が料理して娘を風呂に入れて。食べ終わったら、僕が現像している間に妻が娘の寝かしつけ。朝ごはん作りは妻の担当です。
ーー仕事だけでなく、家事もおふたりで分担することで仕事と家事、両方の効率が上がり、家族みんなでいる時間がより豊かになるんですね。
ええ。基本的に朝食と夕飯は家族3人で食べるようにしています。食卓を一緒に囲むことが、家族の絆においてとても大事だと思うんです。みんなでご飯を食べながら学校の話も聞けますし、家族にとっての大切なコミュニケーションの時間になっています。
7歳の娘が心を痛めた、離島のプラスチックゴミ
――日本の離島を紹介しているサイトの写真では、娘さんもモデルとして登場されていますね。家族3人一緒に外出することも多いのですか?
そうですね。月に1回は広告撮影などの案件で、離島の撮影に家族で出かけます。これまでに、西表島や宮古島、沖永良部島など日本各地の様々な島に行きました。仕事としては大変かもしれませんが、仕事と遊びが完全に一緒になっていて境目がないような感覚ですね。娘は今7歳なんですけど、もう少し大きくなると「親と一緒に旅行になんて行きたくない」って言いだす可能性も無きにしも非ずなので(笑)。今しかできないかもしれないことをめいっぱい楽しんでいます。
――家族で過ごす時間に、娘さんとも地球環境の問題について話したりするのですか?
あえてそのテーマで話すというよりは、自然に感じている部分が大きいと思います。
僕たちの撮影は、ほとんど誰も行かないような秘境を選ぶんですが、どこも半端じゃない量のゴミが流れ着いていて。すぐに撮影できるビーチなんてほとんどありません。場所によってはトラック一台分ほどの量があって、とても拾いきれないこともあります。離島での撮影を始めたのは10数年前になりますが、始めた頃と比べて、明らかに量が増えています。
それらを一つひとつ拾って見てみると、アジアの国々からのペットボトルやプラスチック製品だとわかります。日本のゴミもハワイの離島などに漂着していると聞きますね。そういう現実を直に見て、娘も「これはいけないな」って思うようになったみたいです。もちろん僕たちも、離島での撮影を通して、環境意識が強くなったと思います。
――実際に自然が汚染されている場を目の当たりにすると、環境問題に対する意識が否応なしに変わりそうですね。
そうですね。リサイクルはとても素晴らしいことですが、リサイクルする方がエネルギーを使う場合もある、なんてこともあるように聞きますしね。離島のビーチでゴミ拾いを毎月している我が家では、特に娘が「プラスチックは悪者!」くらいの勢いです(笑)。なので、「都市で暮らしている以上、全部は無理だけど、できるだけプラスチックを買わないようにしようね」って家族で話し合って決めているんですよ。
――家族での時間を多く過ごす中で、娘さんにもサステナブルな考え方が自然と共有されているんですね。他にも日常生活で意識されていることはありますか?
どんなものを買うときも、長く使えるものを選ぶことを意識していますね。うちでは、ジャニーヌの祖父のコーヒーミルを受け継いで使っています。これは彼がオーストラリアに移住した際に、母国のオランダから持ち込んで、メルボルンの家で毎日のように使っていたものです。かっこいいでしょう?長い時間をかけて受け継がれてきたものにしか出せない貫禄がありますよね。
こういうものが近くにあると、意識が変わります。例えば新しく包丁を買うときも、少々値段が張ってもいいから、孫の代まで使ってもらえそうなものを選ぶようになったりとかね。写真もジュエリーもストーリーが伝わってなんぼだと思っているんですけど、普段使うものもまったく一緒ですよね。ストーリーがあって深みが感じられるものに囲まれた暮らしは、とても心地がいいですよ。
普段着も、仕事着も、境界線のないものを選ぶのがポリシー
――ストーリーがある暮らし、とても素敵ですね。洋服やファッションアイテムも、長く使えることが選ぶ際のひとつのポイントですか?
もちろんです。僕たちは、アトリエにいることもあるし、ブライダルのお客様の前に出ることもある。様々なシチュエーションに対応した装いが大切だと思っています。その一瞬で最高のパフォーマンスをするためにも、動きやすさや着心地はとても大切です。さらに丈夫で長持ちするものならばもっといい。
O0uのウェアはまさにそんな服ですよね。普段着としても、仕事着としても、しっくりくる感じがします。シンプルなデザインのものが多いから、自分たちのブランドのコンテンポラリージュエリーとも相性がいい。アーシーだけどモダンで存在感がある服だから、大ぶりのジュエリーがよく似合う。ユニセックスなサイズ感も、家族でシェアできて楽しみ方がたくさんありそうですよね。
そうそう、僕スカーフ大好きなんですよ!いつも妻とスカーフをシェアしてるんですけど、O0uのアイテムとも相性がよさそうだなと思いました。
――お二人の「シェアする暮らし」はとても自然体ですね。今回、O0uブランドモデルを通して感じたことがあれば教えてください。
O0uの皆さんと一緒に、タウンユースにもアウトドアにも似合うラインナップを考えていけたら面白いだろうなと思いました。
なぜかって?僕たちがそうだったように、アウトドアが好きな人って自然とエコに興味が出てくるんですよ。渋谷にゴミが落ちていても何も思わない人が多いと思うけど、キレイな海岸で漂着ゴミを見たらみんな何かしら感じるんですよね。だから、海や山によく行く人たちに適したスタイリッシュなサステナブルウェアを提案できたら面白いなって思いますね。
それに、これからアウトドアを始めるビギナーの多くは都市部で暮らしながら自然を楽しみたい人たちでしょう?「山に行くには山用のジャケットを着なきゃいけないんでしょ?」と考えている人もいると思うので、「こういうスタイルならアウトドアでも普段使いでも楽しめるよね」という提案することはすごくニーズがあると思うんですよね。街とアウトドアどちらにも通用する機能とファッション性を持ったブランドってあまりないので、可能性があるんじゃないかな。
O0uに共感した人たちが集まって、環境や地球についてクリエイティブに考えていけたら最高だなって思います!
Profile:
Ippei & Janine(イッペイ&ジャニーヌ)夫妻
東京を拠点に、フォトグラファー、ジュエリーデザイナーなど幅広く活躍するクリエイター夫妻。イッペイさんは東京生まれの日本人、ジャニーヌさんはメルボルン生まれのオーストラリア人。映画のワンシーンのような人物のポートレート写真を得意とする。
instagram
https://ippei-janine.com/
https://ateliershinji.com/jp/
INFORMATION
2021 Spring & Summer 「気がつけば物語の一部に。」MODEL:IPPEI&JANINE NAOI(フォトグラファー/ジュエリーデザイナー)
Photo : 田尾沙織
Text : 松本玲子